2009年2月1日日曜日

休題 その一

店

 閑話は山の無駄話、休題は文字通り山とは全く関係無い話。何ふざけてんだかねえ。でも、あたしゃあそんなもんです。(え、失礼だって?そう言われればそうなんです、ペコリ)
 十七年程前に隣町(千歳船橋)から祖師谷大蔵に越した。元の家から歩いて楽に行ける所なのだが、別世界だった。分かり易く言えばモロ下町だった。商店街が南北に長く伸び、あらゆる商店が元気溌剌、八百屋の前を通ると、親父と子供が何時でも叫んでいる。
「らっしゃい、らっしゃい、安いよ!」
 何時でも客だらけで客を捌くのに大忙し、夕暮れ迫る町にあちこちの店の呼び声が響き渡っていた。八百屋は単体では生きられないのが世の習い、魚屋、肉屋、乾物屋とチームを組んで一つの単位である。其の周りに豆腐屋だとか、酒屋だとか、お菓子屋だとか、写真屋だとか、ETC……。皆元気でした。
 スーパーも有った。Sは洒落た店、Oは庶民的、Fは安売り、でもどうにかバランスが取れていた。
 破局は何時か訪れる、この世に永遠の繁栄は無い(これだけはお馬鹿な私も断言する)。きっかけは法律の変更(改正とは言いたく無い)なんだろうけど、駅そばの長崎屋が潰れ、大手のOZが出店して、祖師谷の町は過酷な戦場となって、結論から言えば、古い商店街は事実上滅びた……。
 OはOZの攻勢に何とか頑張っていたが、所詮地元スーパー、大資本に勝てっこ無い。其の上追い討ちが掛かった、これまた大手のSAMが参入(駐車場迄完備、つい私も行ってしまうのは無理からぬ事です)Oは消えた。同時期にSも消えた。Sの後に世界的小売業(W)のス-パー部門Tが開業。最早祖師谷舞台のスーパー大戦争。
 大資本同士の壮絶な戦い。何でもどんどん安くなる!万歳!!D系列のFはもっと強力なBに変わって参戦、安売りの町祖師谷!!
 で、小売業は死んだ(と言えるだろう)。知らぬ間に店はポツリポツリと閉まって行った。もう呼び込みの子供の声は、祖師谷の町には響かない。親父はぼんやりと、スーパーの袋をぶら下げた人を見送っているだけになった。その姿を見るのが辛く、あたしは目を逸らせて通った。
 で、町田に来ました。あたしの住む北口方面には、やけに古い商店が残っていて、結構拘った良い物を並べているが、殆ど客は居ない。置いて有る物は驚く程良質なんだが。又あの商店の滅び行く姿を、あたしゃ見なきゃなんないの、そんなの嫌だなあ。
 ところがどうしてもそうなってしまう。理由は簡単、便利が全て。一ヶ所で買い物が済んで、しかも安くて(場合によってだが)、ポイント迄付いちゃあ、当然ですよ。政府のせいにはできない。
 かと言って何もできない……。

  滅び行く各地の商店街への
        哀悼の意の章です。

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