2024年4月28日日曜日

休題 その五百二十


  メッケル少佐の話を続ける。ドイツ軍学の最大欠点は要塞攻略法を持たない事だとある。為に第三軍工兵科の将校達は対要塞戦術の研究を始め、フランス流の攻撃路掘削工事を提案、六時間の激論の末に乃木将軍がフランス流採用を決定した。それが203高地陥落に繋がる。司馬氏は「この程度の幼稚な行動作戦に対しては適切に手を打ち、この為あまり功を奏さなかった」と書いている。

 その203高地である。第一回、第二回総攻撃方法は参謀本部の命令による。乃木軍の無能ではない! 海軍から203高地攻略の要請が来た時、拒否したのは大山巌と児玉源太郎である。司馬氏は「乃木軍幕僚達は大戦略という高次元から陸海軍対立という低次元に引き下げて、203高地への主力攻撃を拒否つづけてきた」と書くが、こうなると何が何でも乃木軍を悪者にしたい、との意図が見える。

 司馬氏の文章の引用を続ける。「海軍の、攻撃の主目的を203高地に限定してほしい、との要求は哀願といえる調子に変わっている。203高地さえおとせば旅順港を見下ろすことができるのだ。大本営も充分承知していた。ただ現地軍である乃木司令部だけが「その必要なし」とあくまで兵隊を要害正面に並ばせ、正面からの攻撃に固執し、無意味に死地に追いやりつづけている。無能者が権力の座についていることの災害が、古来これほど大きかったことはないであろう」。

 著者の鈴木氏は書き乍ら血管が破れかけたのではないのかな。ウソで固めて乃木将軍と幕僚達を最大限の表現で罵っている。司馬氏の取材不足?いや、そんなこたああるまい。何人もの若いユーチューバーが資料を元にして日露戦争を紐解いている。乃木将軍が陸戦の救世主だったとの結論に、調べる皆さんは到達する。事実だからだ。「坂の上の雲」は小説ではあるが影響力が巨大になった。単に司馬遼太郎が乃木大将を嫌いだっでは済まない。事実は時と共に明らかになるものである。若者に期待しよう。

2024年4月25日木曜日

休題 その五百十九


  「ロシア敗れたり」、著者鈴木荘一氏、毎日ワンズ出版と言う本を読んだ。副題が「日本を呪縛する「坂の上の雲」という過ち」なので興味を持ったのだ。

 今迄も何回かこの愚ログで日露戦争を取り上げて乃木大将の評価が不適切だと訴えて来たが、その元凶に切り込む本だった。

 著者曰く「日露戦争の真相を知ることを阻害しているのが「坂の上の雲」なのである。史実を大きくねじ曲げてしまう手法が大胆に取り入れられ、許容限度を大きく超えたウソか数多く埋め込まれている」と容赦ない。

 奥第二軍による緒戦の南山戦を見よう。「名古屋第三師団が突撃の為に立ち上がると、たちまちロシア軍の機関銃に薙ぎ倒された。日本兵は機関銃を知らなかった。火器についての認識が、先天的ににぶい日本陸軍の体質が、ここにも露呈している」とあるが、奥第二軍はロシア軍の十挺に対して、四十八挺の機関銃を持っていた。掩蓋に守られた機関銃が有利だったのであって、日本兵は機関銃を知らなかった、の既述は誤りである、と著者は指摘する。

 緒戦から鈴木氏は厳しく検証する。南山攻略を「結局は二千人という死傷者を出しただけであった」と司馬氏は書くが、南山の攻略により、補給基地である大連港を確保し、ロシア軍を遼陽と旅順に分断して作戦目的を達成した、その事については固く口を閉ざす、と。

 司馬氏がプロイセンから招致したメッケル少佐を「日露戦争の作戦上の勝利は、メッケル戦術学の勝利である、とさえいわれたほどだった」と礼賛しているが、彼の功績は鎮台を師団に改変し機動性を持たせた事のみで、ドイツ流の理論兵学を誇りわがまま勝手をしたメッケル流の風潮が陸軍大学に導入されてから、陸大出身の将帥は劣化した。白を黒と言いくるめる議論達者を造る場になった、とは仙台陸軍幼年学校史からの引用だ。(続)

2024年4月22日月曜日

休題 その五百十八


  電気自動車(以下EVと表記)普及の伸び率が鈍化した。各国が補助金を打ち切った事が大きな原因だろう。が、そればかりとは言えないと思っている。使い勝手が悪すぎるのも原因だろう。常に充電を意識して走るのは偉いストレスだ。その上充電渋滞もある。

 EVに飛びついたのは米国、欧州、シナ。地球環境に良いとの触れ込みだが、そんなこたあないのは各国御承知の事だろう。シナの発電量の70%は石炭である。日本の石炭発電はCo2排出を抑えた優れものだが、シナのそれはCo2排出し放題の旧式で「石炭を焚いてEV走らせている」と揶揄される状態だ。地球環境云々を言うなら世界の32%Co2排出量を何とかしてから言って欲しい。

 EVについては既述だが、製作から廃棄に至る迄を見るとガソリン車よりCo2を出す。長く使えばエコになるが、長持ちしないのがバッテリーだ。従ってガソリン車より寿命が短い。そして重いのでタイヤやアスファルトの粉塵を撒き散らす。何と地球環境に優しいのだ!

 太陽電池にも同じ事が言えるが、地球環境を言い立てて新しい動きが起きて儲かるのは誰か、と見れば大体分かる。シナが儲かる仕組みに見えるのは、あたしの間違いかな?

 欧米も儲けようとしたのだろうが、国家戦略として取り組むシナには敵わなかったと言う事だ。今になってシナ製EVへの関税引き上げを言い出した。地球環境ではなく経済なのけえ? まあ、そう言う事だと思っている。

 これも既述だが、地球学者や物理学者はCo2は地球環境とは無関係だとの発言が続いている。確かに地球の温度が上がるとCo2は増加するが、順序が逆で温度が上がってCo2が増える。Co2が増えて温度が上がるのではない。温度が上がると海水中のCo2が排出されるのだ。

 何故かそれら専門家の意見は取り上げられない。国連機関もマスコミも、環境活動屋に牛耳られているからと、愚考します。