2014年11月30日日曜日

休題 その百三十九




 ネットを覗いて居たら、“七人の侍”っていう白黒映画を見たけど、と言うのが有った。読んで見たら、すっげー面白かった、と続いて居た。其れに対する書き込みが続いたが、肯定的なものが殆どだった。
 そうなのか、若者は七人の侍も知らないんだ。何だか分からない白黒映画なんだ。此れは驚きで有る。
 後に描き込んだ諸君は観て居た訳で、若者全部って事では無いのだが、あの世界の名作も、遠い話になったのだろうか。
 流石に、すっげー面白かったのだから、時代を越えて良い物は伝わる訳だ。
 黒沢明の代表作に挙げる人も多い。あたしは一寸と違うが、代表作だと言われても、当然だと思う。
 キャラの生きて居る事、緻密に組み立てられて居る事、妥協しない迫力を追及した戦闘シーン。どれを取っても当時の世界水準を抜いて居る筈だ。
 其のネット上で不服が出たのは、音が不鮮明なので字幕が欲しい、と言う事。フイルムの劣化に伴いサウンドトラックも劣化した訳だ。字幕が欲しいのは至極もっともな話。
 Sセンターのシナリオの夜学へ行って居た時の事。若い仲間が言う。
彼「七人の侍は有り得ない設定ですよね」
私「有り得ないでしょう。領主の力が及ばない村なんてね」
彼「そうですよね。敵対する勢力に取り込まれますよね」
私「其の通り。フィクションです」
 流石にシナリオライターを目指す青年だ。ものが分かって居る。野武士の群れから領民を守れなければ、戦国領主の資格は無い。
 そんなこたあどうでも良い、と観る者に思わせる力があの作品には有る。従って気にもしなかったが、聞かれたから答えたのだ。
 ハリウッドが買って“荒野の七人”を撮ったが、似ても似つかぬ駄作になった。ハリウッドは、黒沢明の力をまざまざと見せつけられた訳だ。
 世界の黒沢でありますなあ。

2014年11月27日木曜日

入門の山 その三




 人生色々 山登りも色々♪ ってさ。谷川岳なら岩場、って決めつけるのはおかしい。谷川岳や上越国境線は、偉く魅力の有る山域なのだ。其れが故に岩以外を求める登山者が押しかけて気象遭難が多発した。為に、非常に個性的な(ドラム缶の様な)避難小屋が彼方此方に造られた訳だ。
同じく、丹沢なら沢登りと決めつけるのもおかしい。あの自然に溢れた山々の魅力を見たまえ。尾根を行く登山者は、沢を行く諸君の百倍だろう。千倍かもね。
え、誰も決めつけて無いって? そうですね。私のコンプレックスでしょう。
 丹沢から入れば、大自然逍遥派から岩稜挑戦派迄、好みに応じて選択出来るのだ。ん、誤解を呼んだかな。
 勿論、どの山が最初でも、其の後の山の選択は無限大に有る。とは言ってもですよ、最初の山が楽で危険が無ければ、其の後もそういう山を求めるのでは?
 そんなに人は単純じゃ無いんだけど、そうなり易い筈だ。山では無くて、そうねえ、歌で言えば、コーラスから入った人はコーラスに魅力を感じる。ソロの歌には大して関心を示さない。カラオケから入った人はコーラスには関心を示さない。
 そりゃあ絶対では無いけど、其の傾向は有るでしょう?
 コーラスとソロの魅力を分からせて貰えるのが丹沢って、恋に目が眩んだおっさんの戯言(たわごと)ってもんですな。喩は下手だけど、当たらずと言えども遠からず、です。
 丹沢の纏めとしては、登山の入門編。それもパーフェクトな。男らしく、且つ自然が豊富、其の癖優しい部分も有って、易しいコースから途轍もなく厳しいコース迄、貴方のお
好み次第、お好み通りにお選び下さい。其処から先にどういう山登りを選択するかは、貴方次第です。
 ね、良い山でしょう?結論が出たので終わりです。次が長いと思うので(嫌?)。

2014年11月24日月曜日

閑話 その百三十三




 其の林道が下って行く。勿論、此処は登るの一手だから植林を登る。すると653,3mピークに着くので目出度い。
 これが植林の中の、何とも詰まらないピークなのが、余り目出度く無い。古びた小さな標識が打ち付けられて居て、“エボシ山”と書かれて居た。ふーん、名前が有ったんだ。
 昔々此のピークを踏んだ時に、地図を見て居る青年に会った。彼も変なとこ好きの御同輩だったのだろう。
 さて、どうしよう。昔下った尾根でも良いが、日向薬師へ向かう尾根が有るので、此れを行く事にする。あっちの方だろうと、見当をつけて踏み込む。
植林の尾根だ。藪は無い。嬉しい。途中で鹿柵を二度跨ぐ。鹿棚越しも、慣れれば何てこたあない。慣れてる人は少ないだろうけど。唯、頼りが針金なのが偉く頼りない。
 やがて林道に出た。先は植林では無いので、きっと藪だろう。もう藪は充分堪能したので、林道を下る事にする。すると五十前の夫婦連れが居たので、日向薬師への道を聞く。親切に歩道入口迄案内してくれたので、山の話なぞし乍ら行く。
 礼を言って道に踏み込んで思い出した。数年前に日向薬師へくだった時も、林道を少々歩いて此処へ入ったんだ。忘れるもんで有る。
 程無く道に出ればもう里だ。点在する家は花を育てて居る。のどかな山村風景だ。住めば都、こんな所に住んで見たいと思う。
 日向薬師のバス停で三十分程待って、伊勢原へ出た。前に来た時はバスを二時間近く待たねばならなかったので、えーい面倒だ、と伊勢原迄歩いちまったもんだ。今回は大人しくバスで帰った。
いや―、藪が煩く展望も無く足元も悪くて爽快感も全く無い。すっごーい物好き向けのコースだったです。

2014年11月19日水曜日

入門の山 その二





 私は高所恐怖症だから、昔は沢とは無縁だったとは何度も書いた。尾根歩き専門だった。其れでも丹沢は男っぽい山だと感じた。奥多摩や奥武蔵と比べてだ。
 繰り返すが、良し悪しでは無く好みの問題で有る。そして(多分)丹沢を好む人が多くて、登山の入門と位置付けられたのだろう。
 其れは次に続く谷川岳やアルプスを念頭に置いての事だったのだろう。此の場合は北アルプスで、岩繋がりののは明白だ。
 奥秩父派が南アルプスを好むのは、今も余り変わらないかも知れない。岩では無く、あくまで大自然逍遥派と言う事だ。
 因みに、どうでも良いと言われるだろうが、私は丹沢から入って、奥秩父、谷川岳を含む上越国境、八ヶ岳、南北中央アルプスと近場は一通り歩いた。本来は大自然逍遥派なのでは有るのだ。
 其れは丹沢に帰る為だとは、既述で有る。丹沢しか知らないのでは、丹沢の素晴らしさを語れない。彼方此方の山を歩いて後に語るなら、多少は説得力も有ろうと言う事だ。
 で、彼方此方歩いて夫々の良さも知って、どの山もすっごーく魅力的だと痛感しても、結局“丹沢と共に”なのだ。何たって初恋の山なんで別格なの、私にとっては、です。
 丹沢の次は谷川岳って言うのは、丹沢で沢に習熟してから、谷川岳の岩場へ進むって事なのだろう。習熟出来る程に難度の高い沢が、丹沢にはたっぷり在る訳なのだ。
 いやあ、私は立派な高所恐怖症の為、岩場とは全く無関係の山登りをして来たのだ。従って、山へ入る順番なんざどうでも良いって言う情けない位置付けの奴なんです(恥)。
 本当は、丹沢の素晴らしさを語るなら数有る険悪な沢を全て攀ってからにしろよ、と言われて当然なので、私なんざが語る資格は無いのは、先刻御承知の上なのだよ~ん、ヘヘンだ。
 (入門の山 その三へ続く)