ガスの中はこんな感じで、ずーっとこうなんです。
やってはいけないミスを犯した。シェラフの口元がビッショリだったので、バーナーの火で乾かしたのだ。丸で馬鹿で有る。当然布地が熔けて3cm程の穴が開いて、ダウンが飛び出して中に舞う。慌てて予備の靴紐で穴の部分を摘みグルグル巻きにする。
夕食後、用足しに表に出て来て戻ると、コヘル一杯融かして置いた水が綺麗に無くなって居る。ツェルトを出る時、一寸とツェルトを引張ったが、其の時一番端に有ったコヘルがひっくり返ったのだ。
見ると、ツェルトの一番低くなった角が池になって、装備や衣類が沈んで居る。う、う、情無い。ツェルトの底は二枚の布を紐で留めて有るだけと言う簡易さが幸いだった。不幸中の幸いで有る。荷物をどかし、水の溜まった所を持ち上げれば、水は皆底から出て行く。お陰で、更にあらゆる物が、濡れた。
此の夜はどんなに頑張っても、下と左に滑り落ちて行く。寝て居る処では無い。とか言いつつ三時間は寝たのは、ラッキーだった。
明けて二日、相変わらずの雨。前夜ドジって水を失ったので(再度雪を取って融かすのが余りにメンドチかった)、有るのはポリタンの水のみ。コーヒーを沸かし、ロールパン一つとチーズ一ヶ、食後の梅昆布茶でお終い。ま、今日の行程は短いし、下り中心だからこんなんで上等だい。
濡れて重さの増したパッキンを済まし(普通最終日は荷物が軽いが、今回は違った)、出発したら、早々に迷った。閉まった、昨日確り方向確認しておくべきだった。いやー、何せ見渡せたもんで。でも今朝はガスの中、なーんも見えないし、なーんも分かんない。
自然に進むで有ろう方向に下り出して、はっと気付いた。こっちに行くしか無い様に見えるが、確認しないと後で泣きを見るぞ。
方向と地図を合わせると明らかに違う。馬鹿のやる事はそんなもんだ。あたしなら、視界の効くうちに方向の目印を付けておく。え、お前がやらなかったんだって?そうです!!
登り返してピークに立ち、方向を確認すると、偉い急斜面を下るしか無い(狭い視界だ)。一瞬、ガスの流れで其の先に稜線らしき感じが有った。下って正解だった。稜線だった。
思えばアホです。三国峠に程近い、標高の低い山域の雪の中でドッタンバッタン、本人は命懸けのオリエンテーリング、あたしが高見で見て居れば、笑っちゃうだろう。でも、分かんないもんは分かんないの!其れが嫌ならマイナーな雪山には入らない事だ。はい、全くそうでした。好きでやってんです。
其れから何度方向確認をしただろう。風と雨に打たれ乍ら。馬鹿は死ななきゃ直らない。でも、ガスの中に鉄塔が見えた時は嬉しかった。間違い無く長倉山の直下なのだ。もう大丈夫だ、あと僅かだ。でも、油断はしないで、方向を取りつつ、国道17号線に降立った。
後は国道を下ってバスに乗れば良い。巧い具合にバス(一時間から二時間に一本)の三十分前に着き、装備を外せたのは良かった。
越後湯沢で駅蕎麦を食べ、缶チューハイを手に持ってイソイソと、新幹線に乗り込んだのでした。