2016年8月29日月曜日

嗚呼、中高年よ その七




 正月の南ア茶臼ヶ岳の九十九折れの急坂で、滑って大分落ちた。雪の所為だ。うー、と呻くだけで済んだが、荷が重いと体制を整える余裕も無い。
 夏に農鳥の水場へ下る時にも滑って転落した。ガラガラと結構落ちた。二十年以上前だったので、痛いのと恥ずかしいだけで済んだ。
 三伏峠の下りで、滑落した中年の女性が亡くなったと下の小屋で聞いたが、落ちたくない下りでは有った。
 若ければ、万が一登山道から滑り落ちても何とかストップが利く。叩き付けられても怪我で済む。其れが私の年代ならどうなる?  
 先ず咄嗟のストップは無理だろう。動作が鈍いので。篠竹を掴もうとしても空を掴むだけ。叩き付けられれば、あっさり死ぬか骨折かだろう。骨も筋肉も弱ってんでね。
 平成二十六年上半期の神奈川県警が明白な答えを出して居る。遭難者のトップは六十代、次いで七十代、そして五十代だ。良い加減に平均すれば、六十代後半となる。
 私のお仲間がトップなのだ。もうお分かりの通り、普通の登山道だって相当に危ない個所は有る。山登りなのだから当然の事だ。加齢と共に、うっかり、或いは一寸とした事で滑ったり、爪先が引っ掛かったり、踏ん張りが利かなかったりして、滑落し易くなる。
 そして、怪我をしたり亡くなったりする。若ければ、イテテ、で済んで居たかも知れないのだ。
 春日俊吉氏が今の遭難を見たら、何と書くのだろうか。慎重に、あくまで慎重に、命を大切にしなさい、と書くだろうか。そうではないかと私は思って居る。
 記事にするには余りに詰まらない。だけど、当事者と家族関係者には重大問題なのだ。中高年の同志登山者諸君、山で事故を起こしちゃ駄目ですぞ。
 お互いに慎重に行きましょう。特に下りに気を付けましょう。其れを神奈川県警の報告書が教えてくれているのだか
ら。
 此の章終わり。

2016年8月25日木曜日

閑話 その二百




 さて、お盆に大室山を目指した。勿論Yと一緒で有る。曇り空で、思いの外涼しい。神ノ川ヒュッテに車を置いて、三百円の駐車料を払った。安いなあ、普通は五百円なんだ。
 長い長い植林帯の登りが始まる。涼しいとは言っても蒸すので、汗がポタポタ垂れる。Yに至ってはびっしょりになって居る。
 フッフッフ、去年の失敗を避ける為に新兵器を用意したのだ。梅酢を水で割ってペットに入れて来た。綺麗な赤色の液体で有る。これをチビチビとYに飲ませる。とても美味しいのですぞ、汗ビショになって山を登って居るとだけどね。
 う、う、残念な事に梅酢でさえYの大汗には適わなかった。前回と同じく、稜線に出た所でYはつった。最初は左足、次に右足、そして見事に両足、オーマイガッ! 適当な所に張るの一手になっちまった。
 目の前の斜面を登り切れば平坦地が有るのだろうが、もう無理はさせられない。えーい、ビバークだと思えば良い、と草地の斜面に張った。Yが上半身をテントに入れてマットを敷いているうちに動きが取れなくなって、手を引いて引っ張り出した。
 自分で荷物を入れる時に驚いた。テントの中に滑り落ちそうなのだ。思いの外の傾斜だった訳だ。見た目以上なのだ。
 中に納まったのは良いが、置いた物が何でも滑り落ちる。ま、そんなこたあ承知の上なんだから文句は言えないってこってす。
 日暮れてから雨。それも相当強く降った。行動中でなくて良かった。恒例の夜中の宴会も、盛大な雨音の中だ。それはそれで結構なもので、酒の味付けになる。結構風流な暮らしなのだ。
 お蔭で寒い位なのだが、Yは折角の新品羽毛シェラフに下半身を入れただけで寝てる。彼には丁度良い気候と言う事だろう。
 続きます。

2016年8月21日日曜日

嗚呼、中高年よ その六




 では説明しよう、登山道での遭難が80%なのだよ。何だ此れは? 其れは私が聞きたいんだよう(涙)。
 纏め記事が無いのでランダムに最近の丹沢の遭難を探して見た。平成二十六年上半期なんざ関係無く、かたっぱからって事。
 沢での事故は、源次郎沢、勘七沢、小川谷で死亡事故を見つけた。外にも有るが幸いにも大した怪我ではなかった様なので、こんな処だろう。昔と違って、今は素人衆が無闇と沢に入りはしないのだ。
 丹沢山、檜洞丸、モロクボ沢ノ頭、大山、高畑山(!)で死亡事故を見つけた。高畑山ってえのは三ツ峰を下って来て里寸前の最後のピークだ。尤も、巻き道は確かに整備が悪くて多少ヤバくは有るけど、一寸と下れば民家が有る場所なのだ。
 確かに、登山道だからと言って安全が保障されて居る訳では無い。慎重に下らなければヤバい路は五万と有る。其処は誰でも慎重に下るものだ。
 大山の事故はケーブルカーの終点の下社から見晴らし台へ向かう巻き道だ。観光客も通る超一級国道で有る。考えられないけど、現に滑落して亡くなって居る。
 確かに檜洞丸の下りで滑ったら、命に係わる所は多い。今迄はそういう事故が無かっただけって訳だろう。
 そうなのだ、滑ったり、躓いたり、バランスを崩したりする事は、当然有り得る。私だって幾つも覚えが有る。唯、運良く大事に至らなかっただけだ。
 此の間も高取山から弘法山稜線に出て、一寸と余所見をしたら根っ子に足を取られて見事にバタっと前倒しになった。緩い坂だったから良いが、急斜面だったらどうなった事や
ら。尤も急斜面では余所見はしないが。

2016年8月17日水曜日

休題 その百七十三




 一番人気のシン・ゴジラを妻と観て来た。祝日だったのでほぼ満員、二列目に二つ並んだ空席が有ったので、其処に収まった。
 エバの庵野監督、あたしは彼の演出を割と好きなので、テンポ感は大変良い。
 シン、なのでゴジラシリーズとしてはリセットされて居る。今迄のゴジラは核兵器の象徴と言われて居たが、シンでは違う様だ。災害か、敵に依る奇襲攻撃と言った処だろか。
 想定外の出来事に右往左往する政府の姿はリアルで有る。現実に日本が奇襲攻撃を受けても、法整備も準備も不備なのだから、ああなるだろう。「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」と下手な作文の様な前文が示す通りに、平和を愛さない諸国民の存在を、全く想定して居ないのだから。
 現実にゴジラが街を破壊して居るのに、首相は治安出動発令を躊躇う。そうでしょうとも。武力による解決を放棄した国なのだから!
 子供も多少入っては居たけど、子供向けとは思えないので、きっと詰まらなかっただろう。其の代わり大人には面白い筈だ。九条信者が観ても面白いだろう。相手がゴジラなんで、戦争ではないのだからね。
 自衛隊施設部隊の出動に当たって、送別の言葉に「自衛隊は国を守る最後の砦だ」と。全く其の通りだ。相手がゴジラなら本音を幾らでも吐ける。
 エンドロールに古いゴジラ曲を流した。多分当時の録音を其の侭使ったものだろう。其れが効いた所為も有るだろうが、“終”の文字が出て明るくなる迄、誰も立たなかった。
 前述だが、詰まらない映画だと、エンドロールと同時に一斉に立つ。面白い映画だと誰も立たない。これは見事に当たる。
 第一回目のゴジラに匹敵する優秀作品だと評価します。