2023年8月30日水曜日

休題 その四百八十七


  ジブリの「君たちはどう生きるのか」を見て来たですよ。前にも取り上げて、賛否が分かれる作品だと書いた。訳が分からないと言う評価も多かった。

 訳が分からないと言うのも分かるが、宮崎監督の世界は大方が訳の分からんものだ。それを何とか説明するのだが、それでも訳が分からん世界なのだ。今回は説明をしない。

 結果、思うが侭の世界を展開するので、分からんと言う人が多かったのだろう。あたしはどうせ分からん世界だと思っているから、分からない事は問題にならなかった。

 細かい描写に凄みを感じた。冒頭の空襲の場面で主人公の少年が、浴衣を脱ぎ捨てランニングシャツを着てズボンを履くシーン、半端じゃないリアル感である。そんなリアルな描写を積み上げて観客を引き込む。

 帰って来たら妻に感想を聞かれ、「まあ、ジブリの最高傑作じゃないかな」と答えると驚かれた。途中でダラけなかったかと問われたが、そんな部分はなかった。ストーリーはちゃんと通っていて、最期迄目が離せなかった。

 それから暫く妻と「君たちはどう生きるか」談義となった。妻には作中の世界が理解できなかった様なので、あくまであたしの見方だと断ってその世界の説明を述べた。ネタばれになるので書かないが、妻は納得できた様だ。

 あたしが驚かされたのは、妻が少年の母親の正体(?)を中盤で気付いていた事。あたしは終盤迄分からなかった。母親の感性ですなあ。それが話の核となっているので、妻は核心は掴んでいたのだ。あたしは全体を大掴みしていたのみ。

 普通に楽しめる作品だ。説明がないだけ煩くなくてすっきりしている。あたしには非常に好ましい造りですよ。

 ああだこうだと解釈が出ているがそんなのはどうでも良い。自分の感覚で見れば宜しいのだ。毎週映画動員ランクが上がっているが、極めて当然です。是非にとお勧めできる作品です。

2023年8月27日日曜日

休題 その四百八十六

 

 一昨日より福島第一発電所の処理水放出がやっと始まったのは、凄く遅くはあるがめでたい! 冷却汚染水をどうするとも決めずにでかいタンクに溜め続けて、千個以上になってしまったのだ。やがて福島県をタンクで埋め尽くすつもりだったのけえ?

 放射性物質はALPSと言う装置で除去できるのだが、トリチウムだけは除去できない。何故なればトリチウムは水だから。海にも川にも水道にもあたしの体内にもある。従って大量でなければ無害である。

 溜まった汚染水をALPSで処理し、処理水を海水で希釈して海に放出する。国際機関からも問題なしと判定された。問題は風評被害のみである。福島の魚は汚染されてるんじゃないか、と言うあれである。為に福島漁連は反対している。無理からぬが、漁連が反対すればメディアが取り上げ、風評被害を生む。笑えないパラドックスですなあ。

 シナは絶対許せないと息まき、日本産海産物と海産加工品を輸入禁止にした。自分は日本の何倍ものトリチウムを放出してる癖にだ。政治的理由でいちゃもんをつけるのは常の事。

 問題は国内に訳の分からん輩が多過ぎる事だ。メディアは不安がる声を拾っては不安を煽る。世界的水準で問題がない事は言わず(ほんの少しは言ってるかも)不安ばかりを言うのは、自らが風評被害を生んでいるのだ。

 一部野党も安全と安心は違うなぞとのたもうて、汚染水と迄言い募る。風評被害を必死に撒き散らしているが、あれは福島県が憎いのだろうか。「やーい、エンガチョ!」と叫ぶいじめっ子と何の変わりもなく見える。

 それに踊らされる科学的考察のできない人間の多さにも驚く。アンケートでは辛うじて過半数が処理水放出に賛成だが、半数近くが反対してる訳だ。水道水よりきつい基準を満たしているのにだ。科学より情緒を重んじる、旧帝国陸軍の様な発想に呆れてます。

2023年8月24日木曜日

閑話 その四百十八

 


 十七年程前の十月、六甲山で遭難があったと思いなさい。そうです、神戸の裏山「六甲下ろし」のあの六甲山です。1000m未満の山で、関東で言えば高尾山ってとこですか。

 登山者の遭難ではなく、山頂の施設で会社の仲間とバーべキューをした人だ。酔っぱらっての帰りにロープウエイの切符をなくし、止せば良いのに歩いて帰ると言って仲間と別れ、一人で下って行って行方不明。

 ????????

 どうやって道を間違えたんだ? きっと間違えようもない道があっただろうに? 酔っていたから仕方ないとしよう。道を間違えたと気付いても降り続けた。素人だし酔ってたから仕方ないとしよう。そして滑落し骨盤を骨折した。もう歩けない。携帯は壊れ、ペットボトルの水と焼き肉のタレしかなかった。

 休み明けに出社しないので会社の仲間が騒ぎ出し、実家から捜索願を出す。大勢が捜索したが発見できなかった。二十四日目に父親から発見されたと会社に連絡、遺体が発見されたと誰でも思う。ところが生きていたのだ!

 環境保護の人が偶然発見、ヘリで病院へ、体温は22℃、血液を出して温めて戻す療法で蘇生に成功、後遺症もなく全快したのは実に実にめでたい。

 本人は遭難二日目には意識を失ってしまった。理由は低体温症と考えられるそうだ。それから二十二日間飲まず食わずで生きていた。一晩や二晩の低体温症で人は死んで行くのに。

 考えられるのは唯一つ、冬眠状態になったと言う事。冬眠する哺乳類と冬眠に関しての同じDNAを人は持つと言う。そのスイッチが入ったのだろうか。他には学者にも説明がつかないらしいので、きっとそうだろう。唯、そのスイッチが入る人はマレって事だ。ヨーロッパにも似た事例があるそうだが、そのマレな人だったのだろう。

 マレな人、生還おめでとうございます!