2017年5月31日水曜日

閑話 その二百二十八




 春の苗場山グータラ登山の顛末は、書いた通りだ。帰ってからも疲労が取れない。四日たっても五日たっても疲れを感じる。
 何でだろう? アタック日の七時間の行動が響いたのだろうか。それも雪を必死に蹴り込む動作付きだからだろうか。塔をピストンしても五時間半、それが限界なのかなあ。
 未だ未だ体力は戻っていないのだろうが、嘆いても仕方ない。山の疲れは山で取ろうと、六日目の十一日に高取山へ行った。但し12Kgは無しで、小さなリュック一つである。疲労の上乗せになっては適わないので。
 空身だと楽だ。当たり前なんだが、負荷が無いと助かる。疲労は残っているので、ピョンピョンと言う訳には行かない。極力ゆっくりと歩く。
 気温は高い日だったが、晴天で湿気が無いので、木陰は爽やかである。高取ルートは殆どが木陰なので大いに嬉しい。
 擦れ違う人達は「暑いですねえ」と言うが、あたしは暑く感じない。爽やかな良い登山日和だったのだ。
 二時間半で里湯へ着いた。12Kgでないと三十分は違うって事だ。ゆっくりと湯に浸かって、ハイボールと箱根蕎麦で家に帰った。駅から家へも楽である。12Kgの時は、帰り道が偉く長く感じて大変なのだ。少々酔ってもいるし。
 それで苗場山の疲れは消え去った。山で山の疲れを取る、は正解だった訳だ。まあ、迎え酒の様なもんだろう。
 でも、これじゃあ一寸とまともな縦走なんざ、夢の又夢だ。或る程度の時間を歩いておかなければ、同じ事になる筈だ。
 白砂山への縦走はとても無理だとは、苗場山で思い知った。もっと小さな縦走で我慢すべきだろう。
 体力は中々戻るものでは無い。地味に努力を重ねるしか無いって事ですなあ。

2017年5月28日日曜日

休題 その百九十




 長女がネットで映画見放題に加入したので、何人が利用しても値段は変わらないからと、あたしのPCでも見れるようにしてくれた。
 あたしは早寝なので夜は決して観る事は無い。長女の家は夜しか観ない。従って上手く行く訳だ。
 映画とTVドラマだが、外国の作品が主である。ウオーキンヅデッドも其れで殆どを観たのだ。
 無料なので、こりゃあ失敗だと思えば止めれば良いだけなので、暇な時は片っ端から観る事になる。で、こりゃあ失敗だ、の話。
 途轍もなくボーリングをしてマグマが吹き出し、人類が滅亡の危機に陥る映画が有った。真面目に映画を造ろうとしているとは、全く思えない作品だった。
 滅茶苦茶金を掛けてない。コンセプトは如何に安く速く造るか、だと直ぐにバレる。良い加減此の上もない。
 パイプを絞めなければ危険だと言うシーンではちゃちなパイプとバルブが有って、二人の男が大変だ!と騒いでいるだけ。おいおい、人類の運命は二人のおっさんとちゃちなバルブに掛かっているのかよ。
 其の上部は水上基地で、船が接近しようとするが嵐が凄まじくて接近できず、ボートを降ろすのだが、海は静かなのだ。降ろしたボートの上で乗員が勝手に揺れて口々に叫んでいる。ふー、こりゃひどい。
 船橋でも、出演者が体を揺らせているが、如何にも不自然なのだ。一言で言えば、何だこりゃあ、である。
 映画なんだからね、舞台じゃないんだからさあ。或る程度の現実味は欲しいよ。静かな海で、荒れた海だ、と叫んでも実感が湧かない。バカじゃないの、と思ってしまうのだ。
 無料(あたしには)だから仕方ないけれども、映画造りの情熱が全く感じられないのは困る。それも沢山あるのですぞ。は~。

2017年5月25日木曜日

山の報告です その五十四




 最終日の五日、目覚めるともう薄明るい。Yも同時に目覚めて、急いでシェラフを畳みコーヒーを沸かす。天気は上々、この連休は見事に好天に恵まれた。
 六時四十分に撤収終えて出発。雪を下って行くと、意外に早くスキー場に入った。随分とスキー場に近い場所で幕営していたのだ。
 コースは綺麗に均されている。昨夜雪上車で作業したのだろうが、此の広いスキー場を済から隅まで均すのは大変だろう。
 ダラダラ下って、此れから登り返しに近くなったら、小型の雪上車が何台も降りて来て走り去る。係員が配置に着くのだろう。
 一台が近寄って来て止まった。
「一昨日苗場山へ向かった人だね」
 あの横柄な坊主頭の警備員だった。明らかに無事で良かった、と言う顔つきである。ふーん、思いの外に良い奴じゃんかさあ。
 直登して、とは言ってもスキー場なので何て事ないが、ゴンドラ駅に登り着いた。がっちりした体格の係員がいた。
係員「尾根の上にオレンジのテントを張った方ですか」
私「そうです」
係員「様子を見に行こうかなんて話してたんですよ」
 オレンジは目立つから見えたのだろう。日が暮れればローソクの明かりで浮き出ると言う訳か。気に掛けていてくれてたんだ。
 入山日の「へん、何だこんなスキー場、でいっ嫌えだ」って気持ちが一篇に消え去ってしまった。人間なんて勝手なもんである。え、お前だけだって? そうでもないと思うんだけど、Yもそうだったし。説得力ない?
 一番のゴンドラで下り、接続するバスで越後湯沢へ着いたは良いが、早すぎた。駅蕎麦は十一時からだと言う。温泉は十時からだ。ああ、山菜蕎麦が食べたかった、結局パンと酒を買って、新幹線に乗り込んだのでした。

2017年5月23日火曜日

山の報告です その五十三




 山でスキーヤーに会っても何だか他人の気分が拭えない。登山者に会えば身内だと思うのは、当たり前とは言えるけど、一寸と面白い。どっちも他人なのにね。
 其の三人パーティは先頭の女性がリーダーだった様だ。全員三十代の油が乗り切った、と言う連中だ。山が強いのは若者ではなく、体力経験のバランスが取れた三十代後半だ。
女性「テントの方ですか」
私「そうです。白砂山ですか」
女性「その通りです」
私「二人のパーティと単独の男性が入ってますよ」
女性「情報、有り難うございます」
 初日から白砂山の話が出ていたが、説明しよう。苗場山から稜線は南に走り、白砂山の東隣のピークで上越国境に繋がる。佐武流山迄は道が有るが、其の先は道が無い。従って春しか歩けないコースなのだ。
 ある程度の荷物を担いでいる諸君は、其のコースをやると見て間違い無い。我々が様なだらしない爺さんは除くのは勿論だ。荷物の多くは酒なんだから、エッヘン。
 そして其の三人は長い道のりを進んで行った。我々はポツンと見え始めたテントへ向かって下って行く。偉く違う。冒険パーティと飲んだくれパーティの差だろう。
 テント着が十二時四十分、七時間掛かった訳だ。まあ上等、ほぼ読み通りだった。早速雪を補充する。
 改めて乾杯、久方振りに春山らしい山だった。ヤバいトラバースや直登は春山の決りもの、Yも「いやー、怖かった」と喜んでいる。Yよ、君はマゾなのか?
 明日は帰るだけだ。飲もう、どんどん飲もう。そうしなければ荷物が軽くならない。一眠りして恒例の夜中の宴会。我乍ら贅沢な奴等だ。普通は春一泊でやる苗場山を、二泊でやる。しかも駅で一泊も加えてだ。続きます。