2017年5月13日土曜日

山の報告です その五十




 あたしのアイゼンは今日が“お初”だ。雪は締まってバッチリと効く。サクサクと神楽ヶ峰へ登って行く。途中で振り返ると、足元から続く尾根上に、ポツンと小さく我々のテントが見える。オレンジ色でなければ多分分からないだろう。
 前のアイゼンは直ぐに外れた。鬱陶しいものだった。今度のアイゼンは外れない。当たり前なんだがとても嬉しい。まあ、此の冷蔵庫、中が冷えてるよ! と同じなんだけどね。
 神楽ヶ峰迄来ると足跡が増える。単独行の足跡が加わった訳だ。雪も新しい。三日前の雨が新雪になっているのだろう。
 目の前に苗場山が聳え立つ。トラバースの跡がはっきり見える。成程、あそこを行って直登するんだな。
 神楽ヶ峰から一気に下り、笹の中の夏道に出て鞍部に着く。一寸と前に小さなテントが有った。ひょっとすると例の単独行かな。
 トラバースが始まる。思いの外高度感が有るが、雪が締まっているので足跡を慎重に踏んで行く。アイゼンが効いて助かる。Yが行き悩んでいる様子だ。
私「Yよ、危険だと思ったら山側にピッケルを打って、両手で握れ」
Y「はいっ」
 トラバースは嫌なものだ。とは言っても十年前だったらYだって平気で通過した筈だ。万が一滑落した時、片手で自分を支え切る自信が持てなくなったのだ。よーっく分かる。
登りのトラバースだから未だ良いが、下りはもっと嫌なのだが、この際は先の事を考えないの一手だ。
 トラバースを折り返して直登になる。此れ又急な直登である。遠望して覚悟はしていたけれど、想像通りだったですなあ。
 やがて藪に入り、夏道に出た。階段が続く。ふーん、夏ならこれで登って行けるんだ。そして又雪の直登だ。続きます。

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