トラバースの折り返しで一寸と行き悩んだ。素直に足と体の向きを変えれば良いだけなのだが、怖い危ないと思っているので、体が動いてくれないのだ。
どうにか向きを変え、進むと傾斜が緩んだのでYを見る。へへへ、今迄は余裕が無くてYを見てないの。何せ「何も見るな、足を置く場所に集中しろ」なもんで。
Yは既にまともな歩行を捨てていた。山側に体を向け、ピッケルを打ち込んで蟹歩きで横に這っている。靴を必死の勢いで蹴り込んで、まんずはあ、あれなら大丈夫だんべさ。
無事にトラバースを終えれば、鞍部へ下って行くのみ。雪解けでグチャグチャになるが、雪に戻れば綺麗になるのが雪山の良い処だ。
笹の上にアタックザックを置いて、テルモスのコーヒーを飲んで一服つける。危険地帯を越えなければゆっくりする気も起きないのだ。残念だったのは思いの外コーヒーがぬるかった事だが、入れた量が丁度二杯分だったので、仕方無いだろう。其れでも美味しいコーヒーでしたよ。
神楽ヶ峰への登り返しは唯々雪を踏んで行く。一登りさせられた。頂上に着くとスノーシューとスキーのトレースが幾つも有る。スキーヤーが来ているのだ。
神楽・二股スキー場から来れば、1700m迄リフトで上がれる。標高差300mで神楽の頂きなのだから、山スキーの諸君には絶好のゲレンデだろう。危険じゃないし。
ジャンクションから田代への尾根に下って行きつつ振り返ると稜線に十人程のスキヤーが見える。と、一人づつ滑り降りて来て、我々の左下で止まる。山スキー教室の様だ。
見事に滑走する者も有れば。もたついている者もいる。彼等は其の侭沢沿いに下って行くので、楽ちんそうだが、やって見ればば大変だろう。
前方から三人のパーティが登って来る。先頭はぴりっと締まった女性である。続きます。
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