2018年11月30日金曜日

休題 その二百三十三



 英国国営放送(BBC)が英語圏以外の映画ベスト100を発表した。四十三ヵ国の映画評論家二百九人にアンケートを取った結果だそうだ。一番本数が多かったのはフランス映画で、これは至極尤もな結果だろう。
 世界の評論家の推す一位の映画は、黒沢明の「七人の侍」だった。うーん、流石に黒沢さん、日本でより外国での評価が(非常に)高いと言われてるが、如実に顕われた訳だ。
 三位には小津安二郎の「東京物語」。実に渋いところを行っている。四位に又黒沢明の「羅生門」。ついでに言っちまうと黒沢作品は七十二位「生きる」、七十九位「乱」と都合四本が入っている。あたし的には「隠し砦の三悪人」と「赤ひげ」が入ってないのが不服だけどね。
 小津さんは外に五十三位「晩春」が入っているから二本である。溝口健二は六十一位「山椒大夫」、六十八位「雨月物語」、八十八位「残菊物語」と三本もはいっている。黒沢、小津、溝口が日本の代表の様だ。木下監督や川島監督なんて知ってこないよねえ。
 外では三十七位に宮崎駿「千と千尋の神隠し」がある。あたしはジブリの最高傑作だと思っているので、流石に評論家達は目があるなあと思う次第です。そしてもう一人、九十五位に成瀬巳喜男「浮雲」がある。あたしは監督も作品も知らなかったので汗ダラです。
 同じ英国の映画雑誌エンパイアも、全く同じ企画を打った。2010年の事だから一寸と古いかな。こっちは雑誌社が勝手に決めた様なので、大分様変わりしている。
 併し一位は「七人の侍」! どんだけ凄いんだ、この作品は! あたし的には……、止めよう、意味がないだで。
 因みに十位に「千と千尋の神隠」、十六位に「東京物語」、三十一位に「ゴジラ」、四十一位に「隣のトトロ」、五十一位に「AKIRA」、六十九位に「リング」、82位「バトルロワイワル」、九十二位「攻殻機動隊」、九十八位「乱」と大分現代風だ。
 いずれにせよ一位は黒沢明。あたしもそうだが、灯台下暗しなんですなあ。

2018年11月28日水曜日

閑話番外 その百八


 中央アルプス北部で新しい地下足袋を痛めた話はした。閑話二百六十八と九で高取山で降られた話をしたが、何だか右の踵が不安定な感じがずーっとしていたのだ。思えば丹沢主稜の時も何か違和感が有った。
 高取山の帰りの梵天荘で見ると、右靴下(親指付きの軍足)の外側が黒く濡れていた。破れてはいないと思っていたが、破れていた訳だ。雨の所為で明らかになったって事だ。
 と言う事は主稜で負担が掛かり、裂けたのだろう。ざっと5Cm程の裂け目が有る。何とか使えないかと考えたが、裂けた地下足袋は使えない。残念だが破棄と決めた。
 初めて塔に履いて行って、又塔に行って、一ノ沢のつもりが尾根登りになったあれに行って、中央アルプス北部を歩いて、丹沢主稜に行って、高取山に行ったのだから、六回しか使用しなかったのだ。
 山中で四泊はしているので、まあまあ使ったと言って言えない訳ではないが、一寸と消耗が早過ぎやしねえだかね。既述の如く中央アルプスの岩稜で擦り続けた為なんだけど、もっとバランスが良い歳だったらこうはならなかっただろう。
 と嘆いていても始まらない。高価なゴア靴を越すって消耗させたよっかずっと増しだと考えるべきだろう。悲しいけど。
 一寸と大き目だったのも一因かも知れない。あたしは靴は何でも大きければ良いと言う、歪んだ思想を持っている。だもんで靴も地下足袋もバッタンバッタンする程大きいのが常なのだ、エッヘン!
 バカを自慢しても仕様が無いですな。次に買う時はワンサイズ落とすとしよう。それでも決して小さくはないのだから。
 風の様に走り抜けて行った地下足袋よ、有り難う、そしてさようなら。

2018年11月25日日曜日

閑話 その二百六十九




 写真は別の晴れた日のものです。
 雨の低山歩きも良いもので、滅多に横殴りの風はないから傘をさせるのだ。高取山で体を揺さぶられる様な風に当たったのは、今迄にたった一度だけだ。その日は雨が降っていなかったのでラッキーでした。
 ポツポツ出会う人と「降りましたねえ」と言葉を交わして行く。でも皆さんもそれ程嫌そうでもなく楽しげなのは、好きで来ているからだろう。嫌いなら最初から来やしない。
 弘法山稜線に入ってからは人が多くなった。雨なのにねえ。吾妻山あたりで雨は上がり、里湯には行かなかったが、推定到着時間で言うと二時間五十五分を費やしていた。何時もより十五分余分に掛かった訳だ。
 里湯に行かずに梵天荘へ向かう。向こうから若い男性が何人も来る。ガラガラを引っ張っているから何処かに泊まったのだろう。こっちには梵天荘しかない。彼等は梵天荘の客なのかな。
 今年一月に来て以来の梵天荘。玄関で声を掛けると「は~い」と返事。脳梗塞の爺さんは元気らしい、上々である。女将が降りて来る。「風呂に入れますか」と聞くと「たった今七人のお客さんが帰ったので入れます」との返事、矢張りあの若者たちが客だったのだ。
 夕方から山帰りの人の宴会が有る、と言う日はあった。きっと昔なじみの年寄りだろう。それは分かるが若者が何故? まあ、フアンはいるって事でしょう。そう言えば、昨夜は二組のお客さんが泊まって、と言う日もあった。そうでなきゃ潰れちまう。
 ゆっくりと一人だけで、のうのうと湯に浸かる。これこそが梵天荘の醍醐味だ。外の客と出っくわしたら、相手が二人迄は良いが、それ以上なら断られてしまうだろう。湯船は四人だと少々キツめなのだから。
 帰りにファミマでハイボールを買って立ち飲み、鶴巻駅へ向かうと売店も閉店になっていた。増々寂しい駅になっちまったですなあ。

2018年11月22日木曜日

閑話 その二百六十八



 この九月十月は何ともはや、雨ばっか。中央アルプスの将棋頭と丹沢主稜が降られなかったのは、実に幸いだった訳だ。
 その雨の所為だが、リハの高取山へは五月以来御無沙汰だった。六月七月八月があったが、空き日に降ってる事が多かった。台風も多かったし。
 とか言ってるが、蛭が嫌だったのに決まってる。霧雨位なら平気で出かける癖にさ。自分の気持ちだから読める。尤も二分の気持ちが読めなければ、一寸とあれなんだけどね。
 十一月四日(日)に8Kgを背負って出掛けた。もう絶対蛭はいないしぃ。久し振りなので、意識してピッチは抑えた。その日は昼から雨の予定だったので、リュックにビニール傘を刺して行ったのだ。
 そんな予報なのに大山行きのバスは満員、物好きですなあ。へっへっへ、あたしが言っちゃいけなかったですかね。
 最後の階段は例に依ってハーハー言わされ、やけに整備が良くなった最後の登りで山頂に、其処で一服点けていると半袖短パンのトレイルの若者が大山方面から登って来た。「大山から?」と聞くと「はい」と言う。何たる速さ!
 休んでいる彼を残して下りに掛かる。と、間もなく抜き去られてしまった。外にも三人程トレイルの諸君に会ったが、皆速い。短パン半袖も同じ。ハイカー達はウインドブレーカーを着込んでいる(あたしは違うけど)ってえのに、若さですなあ。
 下っているとポツポツ降り始めた。え、予定では昼過ぎだろが、早すぎやしねえかい。段々本降りになって来たので、ビニール傘をさす。まあ、山だからこんなもんだろう。天気は早く崩れて遅く回復するのだ。従って上の写真は外の晴れた日のものです。
 擦れ違う人達はバッチリ雨具を着込んでいる。あたしがそんな事したら汗ビショになっちまうだで、傘で良いのだ。それにしても外の人達は何で汗ビショにならないんだろう。(続)