2018年11月15日木曜日

山の報告です その七十九



 女性がバーナーに点火しようとするが、発火装置のちゅしが悪くカチカチ言うばかりで点火しない。「じゃあこうしましょう」と言ってライターで火を点けて上げた。ライターは必携品なのですぞ。
 立派に明るくなった。濃霧は変わらないんだけどね。自炊室の男性と女性に挨拶して出発したのは、五時四十五分であった。
 鬼ヶ岩に立ったが見えるのは霧のみ。まあ、ゆっくりと行きましょう。丹沢で一番高度のある稜線を歩くのだが、霧の中を歩くだけってえのも一寸と寂しくはあるけれど、少々霧が薄らいで来たのが救いだ。霧に霞む木々もなかなか良いものだ。
 三人の女性パーティと擦れ違う。丹沢山泊まりだろう。あと三パーティと擦れ違う。丹沢で一番旨い飯を食べて来た諸君だ。その丹沢山へ登り返すのが前半のハイライト。誰もいない丹沢山は通り越して龍ヶ馬場で休む。
 ちらっと塔への稜線が見えた。滝雲が玄倉川へ落ちている。慌ててシャッターを切ったが、例に依ってピントが合っていない。目を直すかレンズを替えるしかない。
 日高で二人の空身の女性に出会った。「塔に泊まって丹沢山ピストンですね」と聞くとそうだと答える。何処から来たと問われたので、蛭ヶ岳泊まりと答えると、丹沢も奥深いですねえと感心していた。本当は、もっともっと奥深いんですぞ。何せ富士山迄続くんだから。
 塔の登りに掛かった。ゆっくりと登る。今日最後の登りらしい登りである。そう思えば楽しくもある。とか言っても実際は楽しくなんかない、ハーハー言うだけ。
 塔にはおじさんが一人休んでいるのみ。あたしの方が立派におじさんかな。景色は、無い。唯、山肌の色付き位は見える程に霧は薄くなっている。
 党の景色は充分以上に知っているので全く構わない。あとは下るのみだ。(続)

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