2023年10月30日月曜日

閑話 その四百二十八


  Yと先月は山に出掛けなかったので、蛭がいなくなっただろうから久し振りに高取山へ行った。昨日の事である。予報では晴れなのに夜中から雨だ。回復するのは間違いないので傘をさして家を出た。

 伊勢原に着いた時には雨は上がり、青空もちらっと覗いている。Yは七時過ぎには着いて、例に依って箱根蕎麦の大盛を食べてドトールでコーヒーを飲んでいた。優雅である。

 雨は吸収されてぬかるんではいない。馬鹿尾根ならそうは行かない。Yはストックを二本巧みに使うのだが、傷んでしまったのでこの日はストックなしである。

 割と良いピッチで登った。最後の登りは流石にキツかったらしい、ピッチが落ちた。下り始めも調子が良かったが、吾妻山を超えた所で「あ、つった!」となった。おいおい、高取山でつってちゃ拙いでしょうが、塔なら分かるけどさあ。

 ストックを持たなかった所為もあるかも。でも、筋力を使わない事と体重が多くなった事が原因だろう。せっせと山登りをしないとそうなるってこってす。あたしも決して他人事ではないですなあ。

 若いパーティが多い日だった。十人位の高校生達や、数人ずつの若者、念仏山には五人の二十代(?)のパーティがいた。平日は中高年だが、土曜だったからだろう。

 里湯に入ったら中ぶりのリュックが八個程並んでいる。ははー、朝に小屋を発って今入浴だな。脱衣所に入ると若者が大勢服を着ている最中。きっと楽しい山行だっただろう。あたしも零細山岳会の頃は楽しかった。若者が皆と一緒に山に行くだけで楽しい、増してや泊りがけの山なんて最高だ! 爺さんになるとあの夢の様なワクワク感がのうなってもうてのお。

 前からYがやばいとは書いた。本当にやばくなりましたなあ。山へ引っ張って行くですよ。

2023年10月26日木曜日

閑話番外 その百四十七

 


 前章で、北アルプス三俣蓮華岳付近で行方不明になった二人の二十代男性は自力で下山するかも知れないと書いたが、一人だけ下山した。その彼の通報で、動けなくなったもう一人も無事救出されたのは大変目出度い。

 ユーチューブで山の情報がアップされるのも遭難増加の一因との思いを書いたが、その通りではある。その癖どんどん山のユーチューバーの投稿を見ると、あたしもやって見るかなぞと悪い虫が頭をもたげる。

 技術的な面は心配していない。Aがいる。この愚ログを立ち上げてくれたのもAだ。彼は新電電の立ち上げ社員なので、ユーチューブ立ち上げなんぞお茶の子さいさいだろう(多分)。

 山のユーチューバーは自撮りである。自分が登って行く姿はカメラを置いて撮り、引き返してカメラを回収するのだろう。あたしはそんな無駄な動きは真っ平御免だ。自撮りで顔も写さない。こんな爺さんを見て誰が喜ぶんだ。歩き乍ら話す事が多いが、そんな事もしない。息が切れてできないからw あとで声を入れれば良い。皆さん文字を言葉に合わせて入れるが、そんな面倒っちい事あたしがやっりっこない。凄い手抜きに徹底するのだ。それこそあたしの十八番ですよ。

 さて問題は誰をターゲットにするかだ。勿論若者ではない。若者はこんな爺さんの情報なぞお呼びでない。すると爺さん婆さんだろうが、ベテランの爺さん婆さんには物足りないに決まってるから、これから山を始める爺さん婆さんって事か。そんな人って、一体どれだけいるの?

 爺さんがユーチューブを始めて、丹沢の低山の紹介からだそうだって、何だか夢も希望もないですなあ。誰も見ない絶海の孤島、この愚ログの二の舞ってこってす。

 つい、何でもやって見たくなる悪い癖、歳をとっても治らんですよw

2023年10月23日月曜日

閑話 その四百二十七


  もう高山は冬山である。なのに毎日毎日遭難のニュースだ。北アルプスが多いのは仕方ないだろう、雪がどんどん降るから。

 大曲と言うから槍沢だろう、二十代の男性二人が吹雪で道を失い救助を求め、無事救出された。二十一日の事だ。吹雪の中で行動すればそうなる。それを助けに行く救助隊の苦労も考えてくれよ、とつい思ってしまう。

 これ又二十代の男性二人が三俣蓮華へ向かって行って行方不明になった。二十二日から捜索が始まったが、無事だと良いのだが。でも幕営準備なのだから、無事に下山して来るかも知れない。携帯が繋がらないだけかも。

 爺さんの悪い癖とは心得ているが、昔は(ほら始まった!)携帯なんざなかったから全部自己責任で行動せざるを得なかった。「あのお、自分の位置が分からないんです、助けて下さい」なんて言えなかった。だから慎重第一、迷ったら天候回復迄動かない、と基本を守らなくてはいけないと知り尽くしていた。冬山はベテランだけに許される聖なる領域だったのだ。

 今はベテランでなくても冬山へ行く。装備の驚異的向上がその背景にあるが、携帯の電波が山でも届く様になったのも大きいだろう。その結果登山全体がお手軽になった。

 昔は西穂から奥穂へはバリエーションルートだった。本当のベテランのみが挑むルートだったのだ。今ではユーチューバーが盛んに取り上げている為かと思われるが、難易度の高い一般ルート扱いになって来ている。決して一般ルートではない! あたしは勿論行ってない。若い頃でも力量が不足してたから。今年はそのルートで何人遭難しただろう。その人達はそれだけの経験・力量があったのだろうか。あたしは怪しいもんだと思っている。

 登山が身近になって登山者が増えたのは嬉しい事だ。その代償が自然への畏れをなくす事では、遭難は増えるばかりと危惧します。