2023年10月15日日曜日

閑話 その四百二十五

 


 残念乍ら富士山も山も見えない。十四時近くなのに、三人の女性が”鍋割うどん”を食べていた。”鍋割うどん”とは鍋割山荘が提供するうどんで、ここ二十年位も流行っている。あたしは食べないけどね。

 彼女等が食べ終えて丼を返しに行く時にあたしは下山に掛かった。雲が多いので日暮れが早いのだ。野宿で暗くなるのは嫌なんでしゅう。年寄りのバカと思われますな。

 順調に後沢乗越迄下った。さて、これから登り返しじゃあ。本番の前のコブの塊だけでも済ませようとしたら、太腿の内側がつった。それは限界信号なので、一服点けて休憩する。

 登り返したですよ。やって見れば口ほどにもない、ちょちょいだぜえ。調子に乗った年寄りのバカと思われますな。

 頂上の平らな所は風が通る。風の当たらない所を探して、頂上から5m程の緩い斜面に決めた。下は植林土に小枝、マットを敷いてシェラフを上に置き、端に腰を下ろして目の前に火器やらコヘルやら水やら食料やら酒やらライトなぞ並べる。チューハイを飲んでいると「こんにちは」と声が掛かった。見ると頂上の三人がいる。え、このルートで来たのけえ、正規のルートなら暗くなっても歩けるがこっちは下りが危ないじゃないか、なぞと驚きつつ「こんにちは」と挨拶を返す。三人は元気に下って行ったが、変なおじさんが地べたに色々並べて、一体何なんだろうと思った事だろう。野宿なんだよ~ん。

 緩い斜面と言っても不自由である。体が安定しない。バーナーを真っすぐ立てるのもゴリゴリやる必要がある。置けば土がつく。平らな所には草地もあったのだが、風に吹かれ続けるのはしんどい。斜面は我慢するのみだ。

 色々食べるのも面倒なので簡単に食事を済ませる。地べたに座っているのは存外落ち着かないものだ。たまには野宿の感覚を味わうのも、テントの有難さが分かって大変宜しい(続)。

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