2013年9月30日月曜日

柄でも無い事 その四十六




 劇団の皆と飲んで居た時。皆、ワーワーとそれは煩い。Mも居たが口を挟む間が無い。とうとうMは立ち上がって、「私はー!」と叫んだ。流石に皆黙って次の言葉を待つ。
M「……忘れた」
 Mにならって、あたしは、です。
 あたしは常連扱いされれのが嫌いだ。愛想良く特別扱いされると、其の店にはもう行かない。何軒気に入った店と別れた事だろう。変な好みなのだから、仕方無い。
 あたしは行列に並ぶのが嫌だ。サラリーマン時代に、毎日昼飯を食べた蕎麦屋でも、たまに列が出来て居ると、さっさとほかへ行く。ディズニーランドには行けないって?行った事なんざ無いよ!大昔の万博でも、マイナーな館ばかり回った。それが中々良かったのだ。
 あたしは人を待たすのが凄く辛い。自分が待たされる方が、遥かに増しだ。だから遅れそうになると、酷く焦り狂う。とは言ってもKの様に、三十分前には現地に着くと言う程几帳面では無い。どうにも半端で有る。
 あたしは家で、此れは美味しく出来てるとは言わない。妻に「どう、出来は」と訊かれても、あいまいに返事をするのみだ。子供の頃読んだ“ドリトル先生”の影響で有る。彼もお雇いコックに決して美味いとは言わない。不味い時は不味いと言わなければならないからなのだ。従ってあたしは未だにDrドリトルの弟子で有る。
 あたしは極力着替えたくない。此の暑さでは仕方無いが、涼しい時なぞ一週間でも同じ恰好で居て、妻に強制的に着替えさせられる。子供達にも不潔だ、と非難される。多分山で身に着いた習性だろう。自慢にもなりゃあしない。
 あたしは年に二、三度(三、四度?)はベロベロに酔っ払う。ろくに歩けない状態だ。言いたい放題の様だ。様だと言うのは、多くを忘れて仕舞うのだ。とても良く無い。飲む前は気を付けて居るのだが、酔って調子に乗って来ると、其の戒めを忘れる。丸で駄目親父で有る。
 あたしは愛想が無い。それでも、山でも里でも困って居る人は助けたくなる。尤も此れは、90%以上の確率で皆そうだろう。あたしは、と断る必要は無かった。馬鹿がばれた。
 と、柄にもなくあたしを語って見ました。失礼こいたです。

2013年9月28日土曜日

閑話 その百九





 さてF9。体調もまあまあだ。枯滝の右の岩を登ろう。どう見ても其の一手だ。取り付いたら手掛かりも足場も完備、すと登っちまった。けれども、落ち口から上も岩が続き、そっちの方が苦労だった。
 そしてチェックストーンの滝に着いた。此れは左の小沢で巻いたが、此処も登り難かった、と言うか、ホールドが殆ど無くて、怖かった。何度も言うけど、あたしだからなので、外の諸君なら笑って通過だろう(涙)。
 今回は、久方振りに本流を詰めるのが目的だ。巻き終えたら本流に戻り、ゴーロの斜面を登って行く。ザレ尾根を這うより、余程楽で安全だし、第一効率滅法良い。
 あたしは今迄凄く無駄な馬鹿をしてたんだと、つくづく悲しい。ま、馬鹿だから馬鹿をするんで、道理と言えば道理で有りますなあ。
 で、植林が現れた所で植林に入り、程無く花立の大階段に立った。目的完遂、取り敢えずは目出度い。(途中は見っとも無かったが)



 大倉尾根には、ポツンポツンと登山者が登降して居る。あたしは吉沢平迄下って、休憩とした。
 台(ベンチでは無く木の台が有る。何処もそう)で一服着けて居ると、七十歳位の男性が登って来て、同じ台に休んだ。
男性「足をやられた様です」
私「つりました?」
男性「いや、痛いんです」
 腰を痛めて、暫く山から離れて居たそうだ。つるのは良いが(良くは無いけど)、痛いのはもっと良く無い。
私「無理をしないで、限界だと思ったら、下られた方が良いです」
男性「有り難うございます」
 偉そうに、先輩に言う事じゃ無い。でも、間違い無くそうした方が良いの。あたしは山ではお節介野郎になるのだ。自分が臆病者だろうと、全く関係無い次元の事だ。あくまで本人の為なのだ。(え、偉そうに? だから違うんだって!)
 そして、あたしは下山した。一期一会を繰り返し乍らです。

2013年9月25日水曜日

閑話 その百八





 閑話八十六、八十七で源次郎沢を書いた。茅ヶ崎の男性と出会って、F9を嫌って変なザレ尾根を登った話だ。
 其れから暫くして、又、源次郎沢へ入った。処が変にバランスが悪い日だった。多分体調不良だったのだろう。結局F9は止めて、又もや、同じ変なザレ尾根を登ったのだった。
 一応本流に戻ろうとは努力した。枝尾根やガレを何度もトラバースしたけれど、一度離れた本流には着けず、結局同じ尾根になったと言うお粗末。
 今度こそ、と気負って九月半ば過ぎに出掛けた。F8を巻くトラバースに一寸と嫌な所が有り、残置ハーケンが有るので、其処に通すカナビラも買って、準備OKで有る。
 源次郎を完全に詰めたのは、七、八年前になる。では、今度も詰められる筈だ。あ、断っておきますが、沢登りの入門編其の二の位置付けなんで、高所恐怖症のあたしだから気負うので、普通は笑っちゃう事なんです。
 で、笑えないあたしは、うーヤバッ、と頑張って辿り着いた、F8へ。嫌な(あたしにとってだけだろう)トラバースで、カナビラが役に立った、万歳!
 初めて源次郎に入った時は、何て事も無かった。此の歳になると、ってな事ばかり。どうでも良い岩に偉く苦労するの、其れも何ヶ所も。
 高所恐怖症の臆病者は、本当は沢登りなんかやらない方が良いに決まって居る。でも、出掛けるのだから、自業自得で有る。人を連れて行くと、一人の時より恐怖心が薄まる。見栄か責任感のどちらか、或いは両方だろう。



 茅ヶ崎の男性とF9から尾根に取り付く時、ザレのトラバースをヒョイヒョイとやった。次に一人で、同じ所を行くのが偉く怖かった。前は行けただろう?行けよ!と自分を叱り乍らやっと通過したのだ。
 何だか、見栄なんじゃないかと、己を疑わざるを得ないのは、大変不本意な事だ。本来の自分は、見栄や外聞が無ければ、唯怖がって居るだけって事なのけえ? 多分……。
 情無い話は、続きます。

2013年9月22日日曜日

誰でも~登れる~♪ その六




 写真は、文と何の関係も無い白馬への尾根、失礼。
 正月の西穂高山荘の幕営地が、二十張近いテントで賑わって居た事が有った。ぐんぐん冷えて居る。翌日は晴天疑い無しだ。星はキリっと煌いて居る。ぼやけて居てはいけない。好天前にはキリっとするものなのだ。
 そして、好天の朝を迎えた。小屋とテントから登山者がゾロゾロと出て来て、西穂高へ向かう。私も其のうちの一人で有った。半端では無い寒さだった。古い装備の時代だったので、尚更だったのだろう。ピッケルを持つ手が凍えて難渋した。
 面白いもので、未だに西穂は寒い、と印象付けられて居る。
 さて、最後は中央アルプスの千畳敷ロープウエイだ。カール迄上がってくれるので、とても助かる。観光客も、お手軽にあのパノラマを楽しめる。
 数年前の冬に、カールを横断して居たパーティが雪崩にやられ、死者を出した。其のパーティのガイドが、何でそんな危険な所を歩かせたのだ、と随分責められた。
 でも、カールを横断しなければ、山に取り付けないし、戻っても来れないのだ。私も冬にカールを横断して居る。でも、雪崩は無かった。雪崩そうな所を完全に避けて居たら、積雪期の山には登れない。絶対に安全、と言う言葉は、雪山には有り得ないのだ。
 事故を起こさないのがガイドの責任で有るのは分かるが、相手は大自然だ。人智が及ぶ相手では無い。特に雪崩がそうだ。私は、其のガイド氏に同情はしても、責める気持はこれっぽっちも無い。
 絶対に安全を求めるならば、雪山には近づかない様、ご忠告申し上げよう。
 私の乗ったのは、以上。ね、狭い範囲でしょう?私の行動範囲が狭いので、致し方無いのだ。外の山好きならば、もっと彼方此方の話が出るだろうに。
 どのケーブルカーやロープウエイも、本当に助かる(除く、那須と大山)。荷物を背負ってあの斜面を登ると考えるだけで、ぞっとする。天神平は、ロープウエイの下の雪道を二度下ったが、下りだから良いので、登りたくは無い。絶対嫌だもんねー!
以上、山の乗り物でした。