休題 その百十九

　毎週土曜か日曜には、妻とスーパーで一週間分の買い物をする。混むのだが、土日はポイントが五倍になるのだ。そして一万ポイントになると、現金で一万円渡される。妻は狂喜乱舞する。

　休題百七に書いた通りに、貧しい亭主を持った哀れさで有る。（忸怩）

百円で一ポイントだから、一万ポイントに達するには百万円の買い物が必要だ。でも、ポイント五倍だったら、二十万円で宜しい。

　うーむ、二十万円も買って居たんだ。従って、滅多に妻が狂喜乱舞する局面は無い。でも、ポイント五倍の日に、買い物に行く哀れな気持ちは分かって貰えるだろうか？

　で、話を戻せば一寸と前に其のスーパーで買い物をした。レジに並んだら妻が、何かを買い忘れたと行って仕舞った。順番が来た。ポイントカードも現金も妻が持って居る。当然あたしは焦る。レジのおばさん（あたしよっか随分若いけど）に一寸と待って貰い、広いスーパーに叫んだ。「典子―！」

　妻は典子という名だ。直ぐに妻が現れたので、あたしはカートを移動して待った。荷物が揃って袋詰めして居る時の会話。

妻「（クスクス笑い）レジの人が、びっくりしましたって言うのよ」

　あたしが大声で妻を呼んだ事だ。

妻「声が響き渡ったって」

　そうでしょう、ヤッホーの勢いなのだ。

妻「何時も名前で呼ばれてるんですかって」

私「彼女、名前で呼ばれて無いのかな」

妻「そうみたい。一度でも、大声で名前を呼んで貰いたいですって」

私「俺が叫んでやろうか？」

妻「馬鹿ね、遠慮しますって言われるわよ」

　そう言えばあたしの知人達も夫婦で、お父さんお母さん、と呼び合う事が多い。八割以上になるだろう。

　あたしも子供には、お母さんはね、と言う。でも妻はあたしの母では無い。だから名前で呼ぶ。妻はあたしを、あなたと呼ぶ。此れは結婚した時の申し合わせだ。

　惚気て（のろけて）んのかって？　そんな歳じゃごぜいやせんよ、はっはっは。

　些細なエピソード、失礼しました。