2013年8月31日土曜日

閑話番外 その七十二




 閑話百五、百六の補足で有る。
 八月も二十日、酷暑とは言っても、何か秋の気配が有るもんだ、昔はだが。で、探したが無い。カマドも色付かない。唯、名も知らぬ葉っぱが、一部赤くなって居ただけだ。

 
 毎年の様に暑さの記録を更新して居る。確実に温暖化は進んで居る訳だ。するってえと、カマドも九月にならなきゃ色付かないのかも知れない。
 大暑の中を登って居ると、ミンミン蝉と油蝉の大合唱だ。聞いて居るだけで暑さが増す。でも、堀山を越えたら、ぱたっと声が止んだ。蝉の生息高度を越えたのだろう。
 前章で、山女(山ガール)に触れたが、此の暑さの中でも、めげずに登って居た。擦れ違った一人は、明らかに六十過ぎで有った。綺麗な色のザックを背負い、赤いストックを手に、元気に降りて来る。
 もうこうなりゃあ歳なぞ関係無い。山女と言う女性達なのだろう。是非頑張って下さい!日本の山の為に。(意味不明な方は、前章を参照下さい)
 日の出小屋の残骸が、綺麗に撤去されて仕舞った。小屋を閉じてから三十年近くにもなろうか。最近は残骸と化して居たが、幾十度もの嵐に耐えて、立って居た。塔への最後の登りで、青い日の出小屋(の残骸)が見えると、ああ、着いた、と心底嬉しかった。写真は、其の最後の登りで有る。

 
 此れはあたし一人では有るまい。多くの人が日の出小屋を目標にして居たのだ。其れがもう無いのだ。
 無理も無い。今度の嵐で吹き飛ぶかも知れないから。
 冬は日の出小屋で風を避け、夏は日陰を求めたものだ。本文で触れたが、一度だけ泊まった事が有る。便所が無い小屋だった。
 古い人間には、又一つ懐かしい物が消えた訳です。

2013年8月28日水曜日

誰でも~登れる~♪ その一





 さて、質問です。世界で一番利用者の多いロープウエイ、或いはケーブルカーは、何処の国の何でしょう?
 正解者には、私から「偉い!」と褒め言葉が送られます。え、そんなもんいらないだって? 分かる気がする。。。。。。
 ではヒントです。日本に有ります。驚いたでしょう?私も驚いた。根拠も無くヨーロッパの何処かだと思って居たもんで。
 第二ヒントです。私も、多分貴方も乗った事が有ります。日本国内で世界一となれば、当たり前の話ですなあ。
 正解は、箱根の大涌谷から桃源台へのロープウエイでした。成る程、至極当然だ!! 或いは千畳敷かな、とも思ったけれど、とてもじゃないが箱根には適わないのだ。何たって、東京・横浜の裏座敷で有る。自然に恵まれ、温泉に湖に富士山に噴火口と来ては、無敵の存在だ。伊那の田舎とは格が違う。
 丹沢には、大山にケーブルカーが有るが、頂上迄は行かない。頂上へは一時間半程の登りが必要で、案外きつい。お陰で頂上は山らしさを保って居る。もし駅が頂上に有ったら、ハイヒール姿の女性が闊歩する事だろう。ま、悪くはないけども、私が大山山頂に行く事が無くなって仕舞うのは、間違い無い。
 昔の「大倉尾根」の章で、花立迄ロープウエイを通す計画が有ったと書いた。地盤が弱いので(半端では無く滅茶苦茶に弱いのだ)、保守の費用の割が合わない為に中止になったらしいが(推測)、本当に中止になって良かった。
 と言い乍ら、もし花立迄ロープウエイが有ったとしたら、お前は乗らないのかい? う、痛い処を突いて来やがる。多分、乗るだろう。しかも、喜んで。何たって、花立迄歩かずに行けるのだ。涙が出るじゃ有りませんか。
 (誰でも~登れる~♪ その二へ続く)

2013年8月26日月曜日

休題その百十八




 大分前になるが、ギャングオブザニューヨークが上映された。前述だろうが、ディカプリオは此の作品の為に、アナキン・スカイイウオーカー役を断ったと聞いて居る。
 とても残念だ、あたしとしては。ディカプリオが演じれば、どれだけ見事なスカイウオーカーになっただろうと思う!!
 久しぶりにギャングオブザニューヨークを見直して、どうでも良い事に気付いた。ご承知の通り、ネイティブと称する一団と、移民(主力はアイルランド人)の闘争が縦軸だ。
 ネイティブたって移民には変わりない。時間の差だけだ。壮絶な殺し合いを演じる迄に対立は深まった訳だ。
 其の縦軸にディカプリオの復讐や恋を絡め、南北戦争の徴兵制への反発からの暴動を横軸として、話は進む。
 敵役と言おうか、副主演と言おうか、ネイティブのボス役のダニエルデイルイスの存在感が圧倒的で有る。主演のディカプリオも上手い役者だが、彼には全く太刀打ち不能なのだ。格の違いって事だろう。
 で、気付いた事。主役は一応ディカプリオだが、本当は違う。当時のニューヨークなのだ、と気付いた。あーあ又馬鹿が始まった、と思う人と、今頃やっと気付いたか、と思う人が居るだろう。どちらから見ても、結局あたしは馬鹿……。
 横糸の暴動を、縦糸のクライマックスへぶつけて、一気に収束させる、何もかも。凄い。歴史の表し方の見本にしたい。
 映画館で見た時は、其の重さに圧倒されて、重い(良い意味で)作品だとしか思わなかった。重い筈だ。歴史が、ニューヨークが主人公だったのだ、ギャング達は単なる狂言回しなのだ。
 あくまであたしの主観だ。全然違うかも知れない。とは言っても、多分当たって居るだろうとは、思う。疑う方は、見直す事をお勧めします。
 因みにあの町は、完全に作り上げたそうで、オープンセットに足を踏み入れただけで当時に(気持ちが)戻る、とは何と凄い!
 其の元祖は黒沢明でしょう、きっと。

2013年8月23日金曜日

閑話 その百六





 大倉尾根の詰め上げ、馬の背から塔は600mだが、大変な600mなのだ。第一、山で距離は、参考にしかならない。其の600mの標高差が、200mと800mとでは、天国と地獄の差が有る。
 此の場合は、確り疲れての最後の登りの大変さなのだ。其れに暑かったし。其の最後の登りで、四十代の男性を抜いた。半ズボンの彼の脹脛は確りと筋肉が付き、真っ黒に焼けて居る。登山とは限らないがスポーツマンで有る事は疑いない。
 其の彼が足を引きずる様に、やっと歩いて居る。ははー、つったな。どんな頑強な筋肉でも、つれば無力で有る。可哀そうに、顔は苦痛で歪んで居た。でも、直ぐ其処が頂上だ。
 実はあたしもつって居たのを、誤魔化して登って居るのだ。珍しい事に、右の脹脛と足の甲だ。前半の好調の時に、右足で体を押し上げる動きをして居たのだろう。其の上大汗をかいて、つった訳だ。
 頂上は流石に人が少ない。同時に日も翳って冷たい風が吹く。見えないと思った富士が、ほんの少し頭を見せた。丁度登って来た、麦わら帽子の先輩に声を掛けた。
私「ほら、富士山が頭だけ」
其の人「おお、今日は見えないと思った」
 先輩、お互い頑張った甲斐が有りましたね。
 座って休んで居る中年男性が声を掛ける。
中年男性「涼しいですねー」
私「本当です、下が暑かったから天国ですよ」
 下りに掛かった。一本松で休んで居た学生達が来る。皆さん元気に挨拶する。若さとは凄い。休んで居た時はぐったりとして居たのに。
 こちとらそうは行かない。何だかもたもたして居る。登りに調子こいて、下りでガックリ来た訳だ。同年輩の諸君は調子こいたりせず、確実に歩を進めて来たのだろう。従って下りは抜いたり抜かれたり、こんなに下るのけえ、と情け無い思いをした(忸怩)。
 O屋で一杯やったのは勿論だ。おかみさんの話だと、朝から34℃だったそうで、汗まみれになるのは当然の事。
 とことん疲れました。具合が悪くなる程だ。暑さは、嫌と言う程満喫出来た一日だったのです。