2013年8月13日火曜日

休題 その百十七




 日本ウナギが絶滅危惧種になったとは、前に書いた。
マリアナで孵化したウナギの稚魚(シラスウナギ)は、海流に乗って日本列島へ向かって居たのだが、海流の変化に依って南下して死に絶えるものが増え、乱獲も祟って(此れが主らしい)、捕れなくなったのらしい。
 養殖ったって、シラスウナギを捕って、其れを成魚にするのだから、シラスウナギが捕れなければ、どう仕様も無い訳だ。
 シラスウナギの価格は、二年前と比べて三倍、十年前と比べて十五倍にもなって居る。此れこそウナギ登りだなあ、はっはっは。
 天然資源(シラスウナギ)に頼らない、完全養殖も成功はして居るのだが、稚魚から成魚になる率が余りに低くて、採算ベースにはとてもじゃないが、のらないらしい。
 技術とは進歩するもんなんです。孵化した稚魚が食べるプランクトンが解明された(正確には其の死骸)。従って、完全養殖への道は開かれた! でも、未だ未だ先の話で、あたしの死に際に、間に合うかのお??
 東南アジアのウナギも有った。知らなかった。一寸と皮が硬いらしいが、蒲焼にすれば分からない程度だそうだ。ヨーロッパウナギも有る。輸入すれば良いのだが、先様も消費するのだから、大量には無理だろう。
 従って、店を閉めざるを得ない鰻屋が続出して居る様だ。折角腕を磨いて、秘伝のタレを伝えて来たのに、余りに高価では客足は遠のく。気の毒だが、経済の原則だ。経済に情実は無い。経済だけだ。その経済が、日本ウナギを絶滅寸前に追い込んだのだ。(乱獲)
 覆水盆に戻らず、取りあえずあたしは蒲焼とは縁が無くなろうとして居る。とても悲しいが、此れも経済だ。だからだろう、あたしゃあ経済学は、でーきれーだった。
 知人から商品券を贈られた。よし、此れで蒲焼に今生の別れを告げようと、妻と食べに行った。町田のデパートのレストラン街だったが、満員。え、入ってるじゃんさー。手が出ないのはあたしだけかい? 経済です。
 流石に老舗、上品な味だ。安い店やスーパーの蒲焼しか知らない妻は、味が薄いと言う。貧しい亭主を持った身の不運と言う事で、可哀そうな話で有る。
 あたしは美味しく頂きました。そして、此れでもう、ウナギには会えないのだ。
 それで良いのです。乱獲して安売りして、日本ウナギを絶滅させるより、高くても手が出せる人が、ウナギ文化を守ってくれれば宜しい。
 さようなら、蒲焼。

2 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

読んでいて涙が出ます!本当に、老舗のかば焼きは特別の味ですね。食が細く、一日にトマト2つ、、、などというほど食べなかった二人の娘達が3歳と4歳だったとき、根津の鰻専門老舗に連れて行ったとき、ぺろりと一人前の鰻定食を食べたのには、驚きました。子供の舌でも、美味しいものはちゃんとわかるのですね。かば焼きは 東京の伝統なのに、そんな老舗が無くなるのは悲しいです。

kenzaburou さんのコメント...

あたしが鰻屋だったら、秘伝のタレを抱いて滝に飛び込みたくなるでしょう。
本当に、残念且つお気の毒の一言です。