2016年3月30日水曜日

閑話 その百八十六




 妻は腰痛持ちで有る。背中も痛む。椅子が怖いと有名作家の様な事を言う。山歩きをすると良いのだが、何かと忙しくて間が無い。
 空いた日だって有るのだが、翌日用が有ると駄目で、前日忙しくても駄目なのだ。そんな事を言っていたら治るものも治らない。
 どうやら間が有ったらしく、弘法山に行くと言い出した。ではお付き合いしようと、昨日行って来たのです。
 あたしは高取山から弘法山の稜線へ向かい、妻は権現山から弘法山を経て分岐点へ向かう。前にもやったやり方だ。
 天気はまあまあ、妻より一時間早く出掛けて高取へ登る。八日前にY、Aと来た時より新緑が目に付く。刻々と春がやって来ているって事で、春は麓から上がって来るのです。
 聖峰から一気に登るので頂上では汗ビショなのは常の如くだ。リハなのだから仕方無い。頂上の新緑には未だ早い。あと半月位かな。
 聖峰で会った七十代の男性が「私は遅いので」と言っていたが、下りにかかったら直ぐに擦れ違った。速いじゃないか、立派なもんだ。あたしは頂上には十分しかいなかったのだから、十分一寸との差なのだ。
 何人かと擦れ違い乍ら念仏山で電話した。妻は弘法山を下り始めた処だった。分岐点であたしが居なければ吾妻山へ向かう様に言って電話を切った。うーん、分岐点には妻が先に着くかな。そしたら少し待って吾妻山へ追いかけるの一手か。
 多少急ぎ気味に分岐点へ着いたら、どんぴしゃりに妻も着いた。やろうたってこうは上手くは行くもんじゃない。あたしは驚いたが妻はちっとも驚かない。多少頭に傷があるのかも知れない。
 とことこと下り、里湯で入浴、一杯やって帰った。桜は一分咲きで人が大勢居たとの事。屋台も二つ出て居たそうで、満開になったらどうなるんだろう。恐ろしや。
 本人も月に一度は来なくちゃ、とは言うのだ。リハなんだから時間は造らなくちゃね。本当は月に三~四度必要なのです。(山勘)

2016年3月27日日曜日

柄でも無い事 その五十二




 お馴染みB級グルメの箱根蕎麦です。今月に入ってから器が変わった。今迄は普通のドンブリ型、新しくは一寸と縦長の物になった。「ハコソバ」なぞと書いてある。
 別に変えなくてもなあ、とは思ったが、去年で五十周年だったので、記念なのだろう。
 言う迄も無く小田急の駅蕎麦だ。それも全国私鉄の最大大手なのだ。これには一寸と驚いた。近鉄は?名鉄は?東急は?何処も箱根蕎麦には及ばないのだ。JRは別だ。企業の規模が違う上に味災に支配されている。
 小田急沿線に三十九件、主要な駅には全て有ると言って良い。一駅に二件有るのが、新百合ヶ丘、町田、海老名、湘南台の四駅だ。
 小田急から離れて、橋本、古淵と横浜線に二件、千歳烏山は京王線、そして茅ヶ崎。京王の駅蕎麦は質が劣るので無理からぬ処。
 さて、此処からが驚きの都心部で有る。田町芝浦、四ツ谷、大久保、新橋、秋葉原、田町、川崎(都心部では無いですなあ)、豊洲、赤坂だ。
 最早小田急の駅蕎麦とは言えない。立ち食い蕎麦と言うのもどうだろう。殆どの店が椅子席になっているからだ。あたしの良く行く町田北口店は椅子が二席しか無いが、南口店は広くて椅子席ばかりだ。
 詰まりお手軽蕎麦チェーンと呼ぶのが相応しいのではないだろうか。現に安いのに、下手な蕎麦屋よりよっぽど美味い。いや、普通の蕎麦屋とどっこいかそれ以上だ。値段を考えれば軍配は当然箱根蕎麦に上がる。え、そんなのお前だけだって? まあ、年金生活なもんで。。。。
 疑う人は色んな蕎麦チェーンと比べて見れば宜しい。多少は好みに依って意見も異なるだろうが、何処と比べても勝るとも劣らない筈だ(多分)。
 大盛り券は百十円する。大盛りは無料なんて店が多いのに、うちの蕎麦は高いぜ、と言ってる様なものだ。自信の表れだと思う。
 麺ばかりではない。汁も売っている。小さな瓶に入っている。これは外で見た事がい。汁に対する自信であろう。
 普段でも山帰りでも年中利用して、其の良さが分かったので再三取り上げている。一銭も貰ってませんからね、念の為。

2016年3月24日木曜日

閑話番外 その九十二




 前回の閑話の写真は其の日のものでは無い。花は咲いていたが新緑では無いのだ。一昨年に撮った写真で有る。此の章の写真は同時期の新緑。じきにこうなるので。
 其の日は曇り空で、頂上ではパラパラと雨が来た。弘法山稜線に出た時も多少降った。従って写真の様に明るくは無かったのだ。
 急に気温が下がった日だったので、寒い位でAはフリースを着込んだ。山用のものであたしのユニクロとは大違いだ。
私「それ、風通す?」
A「通さない。別に裏張りは無いけど通らない」
 うーん、高いだけの機能は有るって事だ。外の登山者たちも確りアノラックを着込んでいる。トレールランの諸君は別だ。
 Yは半袖で有る。雪の上でも半袖なのだから至極見慣れた姿だ。でも、初めて見る人は驚く。追い抜いた女性が「凄いですね!」と言ったが、何、「変ですね」が正しいのだ。
 Aに事前に食べさせ水分を取らせてれば完璧なハイクだったのです。

2016年3月22日火曜日

閑話 その百八十五




 Aと高取山に行こうという事になり、Yと三人で出かけた。三連休最後の二十一日、詰まり昨日で有る。
 山里はすっかり春の息吹、新緑こそ未だだが花が色々咲きだしている。三人共花は全く分からないので、花としか言えない。無風流な一行なのだ。
 聖峰には誰も居ない。曇っているのに展望は利く。Aは最新式のリュック、Yは新品のリュックだ。あたしだけがボロいの。Aは洒落たゴア靴、Yはがっちりした革靴、あたしは地下足袋の体たらく。何時もの通りだ。
 Aはメタボ体型を一新してやけにスマートになった。180cmの身長なので細長く見える。病気ではないので、或る程度の歳になると痩せるDNAなのかも。
 難無く頂上。尤も此処で難が有ったら山登りは無理って事だ。何せ556mなんだで、高尾山より低いのだから。
 下りに掛かるとトレイルランの諸君が結構やって来る。恰好のゲレンデなのだろう。急な下りもピョンピョン降りて行く。
私「バネが利いてるなあ」
Y「若さだね」
A「歩いて下っても危ないのに」
 こっちは全員還暦越え、ゆっくり行けば宜しい。十数人のパーティが登って来る。「ゆっくりどうぞ」と声を掛けると、先頭の七十代男性は「ゆっくりしか登れないんだ」と笑う。
 十二時過ぎには里湯到着。大きめのザックが幾つか並んでいる。ははあ、今朝塔から降りて来て途中下車して入浴だな。
 風呂上りに二階の食堂で乾杯である。AとYは大山豆腐のやっこを二つづつ並べてる。
Y「スーパーの豆腐と全然違うんだ」
A「スーパーなら百円だけどね」
 馬鹿を言い乍ら程良く飲んで食べて、さて帰るとなってAが具合悪くなった。トイレで吐いたが、Yの甲斐甲斐しい介抱ぶりは見事だった。Yの面目躍如の一シーンだ。
 水を買って用意し、支えて歩き靴を履かせ表のベンチで休ませる。そしてAの下車駅迄付き添ってくれた。
 思えばAは朝食抜き、頂上で一寸とだけ固形行動食を食べ一寸とだけスポーツ飲料を飲んだきりだ。其の侭入浴し乾杯。多分喉が渇いているところへアルコールがどっと入って行ったのだ。
 気を付けなかったあたしの落ち度です。Aはきっとショックだっただろう。気の毒に。