2016年3月22日火曜日

閑話 その百八十五




 Aと高取山に行こうという事になり、Yと三人で出かけた。三連休最後の二十一日、詰まり昨日で有る。
 山里はすっかり春の息吹、新緑こそ未だだが花が色々咲きだしている。三人共花は全く分からないので、花としか言えない。無風流な一行なのだ。
 聖峰には誰も居ない。曇っているのに展望は利く。Aは最新式のリュック、Yは新品のリュックだ。あたしだけがボロいの。Aは洒落たゴア靴、Yはがっちりした革靴、あたしは地下足袋の体たらく。何時もの通りだ。
 Aはメタボ体型を一新してやけにスマートになった。180cmの身長なので細長く見える。病気ではないので、或る程度の歳になると痩せるDNAなのかも。
 難無く頂上。尤も此処で難が有ったら山登りは無理って事だ。何せ556mなんだで、高尾山より低いのだから。
 下りに掛かるとトレイルランの諸君が結構やって来る。恰好のゲレンデなのだろう。急な下りもピョンピョン降りて行く。
私「バネが利いてるなあ」
Y「若さだね」
A「歩いて下っても危ないのに」
 こっちは全員還暦越え、ゆっくり行けば宜しい。十数人のパーティが登って来る。「ゆっくりどうぞ」と声を掛けると、先頭の七十代男性は「ゆっくりしか登れないんだ」と笑う。
 十二時過ぎには里湯到着。大きめのザックが幾つか並んでいる。ははあ、今朝塔から降りて来て途中下車して入浴だな。
 風呂上りに二階の食堂で乾杯である。AとYは大山豆腐のやっこを二つづつ並べてる。
Y「スーパーの豆腐と全然違うんだ」
A「スーパーなら百円だけどね」
 馬鹿を言い乍ら程良く飲んで食べて、さて帰るとなってAが具合悪くなった。トイレで吐いたが、Yの甲斐甲斐しい介抱ぶりは見事だった。Yの面目躍如の一シーンだ。
 水を買って用意し、支えて歩き靴を履かせ表のベンチで休ませる。そしてAの下車駅迄付き添ってくれた。
 思えばAは朝食抜き、頂上で一寸とだけ固形行動食を食べ一寸とだけスポーツ飲料を飲んだきりだ。其の侭入浴し乾杯。多分喉が渇いているところへアルコールがどっと入って行ったのだ。
 気を付けなかったあたしの落ち度です。Aはきっとショックだっただろう。気の毒に。

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