2016年3月6日日曜日

閑話 その百八十四




 続きなのだが矢張り閑話で行こう。
 梵天荘は大和旅館より小さかった。声を掛けると爺さんが階段を降りて来た。
私「風呂に入れますか」
爺さん「入れますよ。唯、私は脳梗塞を患ってご案内できないのです」
私「構いません。説明して下されば行けますので」
爺さん「済みませんねえ」
 笑うと歯がガタガタで有る。石段を登って左へ折れて突き当たりだそうだ。電気は自分でつけてくれと言う。如何にもあたし好みではないか。客が来るなんて全く想定もしていない。こうでなくっちゃさ。
 急な石段を登った。これじゃあ脳梗塞の爺さんには案内できっこない。左に折れて突き当たりに風呂場が有った。
 うーん、残念、湯船が小さい。ゆったりと身体を伸ばして二人、一寸と詰めて三人が限度だろう。湯は結構流れているのだから、もっと大きく造れば良かったのに。
 それでも独り占めだから文句は無い。のんびり雨だれを見乍ら湯に浸かっていたら日が射して来た。シメシメで有る。
 爺さんにビールの販売機は有るかと聞いたら、客室の冷蔵庫から出してくれ、との事、湯上りに一杯やりたかったがそこまでしてまで飲みたくも無い。風呂場の隣に二つ有る客室を横目で見乍ら石段を下る。
 声を掛けると爺さんが出て来たので料金を払い靴を履く。
爺さん「又お越しください」
 月曜には又来よう。大和は相客がいる事が多いが、此処は先ず其の心配は無さそうだ。でも、これで営業して行けるのだろうか?
 あたしが心配しても栓無き事。コンビニでチューハイを買って店先で飲んだ。味気無いけど仕方無い。
 これで一件温泉の持ち札が増えたって事です。何曜日でも大丈夫って事で目出度い次第なのです。

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