2023年11月29日水曜日

閑話番外 その百四十八

 


 前々章で三時半には出発したのに、Yの体調不良で引き返した話を書いた。その時にテントに帰ってのYの台詞が的を得ていた。曰く「歳を取って山を登れる人と、山を登れない人に分かれるんだと思う」。

 全く同感である。生まれ付いた体幹の強さとは、トレーニングで多少は補えるだろうが、体幹の弱い人は結局体幹の強い人には遠く及ばない。歳を取る程にその差が明らかになって行くと見える。

 あたしもYも若い頃はそれなりに頑張れた。ガレザレの急斜面も這い登れた。今じゃガレザレに立っているのも難しいんじゃないかな。

 幕営で山中四日の縦走なんて、あたしが六十歳前だったから平気の平左だったが、六十代中半からは辛い山行となった。七十五歳の今じゃ考える事すらできないw その縦走の時Yは五十歳そこそこ、だから歩き通せた。数年前の谷川岳小縦走では、Yがとことん参っていたので「もう縦走は止めよう」と宣言した程だ。

 Yは確かに太ってはいる。それでも前は平気だったが、六十代中半から一気に衰えたと思える。あたしも結局直の差はあれども同じ事なのだ。二人共何のトレーニングもしていない自堕落者だが、せっせと鍛えても年齢の壁を迎える自信はある(おいおいw)。それが何年か伸びるだけだ。

 廃退的な思想に思えますか? チッチッチ(外人調)、それが事実です。九十歳近くで大倉から蛭を往復する人がいるが、特殊な人だ。天性の体幹が違う。一流アスリートは皆天性の体幹が人並外れて強いし、そうでなけりゃあ一流になんか成れないって事です。

 若き日にキスリングを背に(今から思えば)飛ぶ様に歩いても、抜き去られる時がある。あいつ、普通の強さじゃないな、と天性の違いを何度も思い知った。歩けなくなった言い訳ではなく、情けなくも厳然たる事実を書きました。

2023年11月26日日曜日

休題 その五百


  D300を使い始めてから九年です。前々からスイッチが入り辛いのが難点だった。一回でスイッチが入る事はなく、バッテリーを取り出して擦り、収納口をフーフー吹いてバッテリーを入れ直す。酷い場合は二度も繰り返す。思いの外面倒っちい。

 再生や消去のボタンも反応が鈍くなった。もう故障寸前である。大きいので袋から取り出すのも一苦労、それにずっしりと重い。要するにあたしが衰えたってこってす。

 次女はスマホで山の写真を撮る。綺麗に撮れている。薄暗くてもちゃんと写る。望遠が無いのがどうにも困るが、スマホに望遠が付いている程度で充分なのだ。それでネットで調べ、ヨドバシカメラへ三度も行って買うカメラを決めた。

 お金を持って買いに行くと「その機種は三、四ヶ月待ちです」と言う。ガビーン、そんなに待てねえだよお。似た水準の物はないかと尋ねると、キャノンのIXY650が良いと言う。初心者向けの様だが、光学的に十四倍でデジタル的には四十倍は行けるみたいだ。これで結構、あたしは写真が目的で山に行くんじゃないので。写真が目的の諸君は朝と夕方を狙う。あたしゃあ寝ているよ。

 マニュアル通りにセットして、最初に撮ったのが上のD300の写真。室内でも明るく撮れるのは凄い! D300だったら日差しがなければロングシャッターになっちゃうだろう。

 軽くて小さいのも良い。唯、予備バッテリーがメーカー切れで二ヶ月待つとの事。キャノンさんよ、確り作って下さいよ。

 長い間ニコンを使って来て、キャノンは初めてである。ニコンと別れるのは一寸と寂しくはあるが、小型デジタルカメラを作ってないのだから仕方ない。

 軽くて明るくて使い易い、あたしにはぴったりだ。総てカメラ任せ、素人でも使えます。あたしゃ充分素人なんですから。

 長い間有難うございました、 D300。

2023年11月23日木曜日

閑話 その四百三十一


  Yが「もう少し登ろうか」と言う。無念なのだろうが、傷口を広げるだけだ。即下るにしかずである。暗い中を下り始めると、次から次へと三人もライトで登って来る。皆若者で「お早うございます」と元気である。車で来たのかどうしたのか、昭和の様に今だにライトでバカ尾根を登る人はいるんだと驚く。

 堀山迄下るともう明るい。上の写真が堀山。そしてぽつぽつと登って来る。え、未だ一番バスも出てないのに何なんだ! 知らなかった、早い人は早い。電車やバスとは無関係な様です。

 幸いYは下りには支障がなく、テントに着けた。明るくなってから十人以上と擦れ違っただろう。皆さん若者だ。あ、あたしの言う若者とは十代二十代三十代、場合に依っては四十代も含まれる。何せあたしが七十五の爺さんなもんでねw

 テントに入ってコーヒーを沸かして飲んでいると人の気配。若者がテントを張っている。これから塔へでもと思ったがそうではなかった。調理用具や食材をテントの前に並べて自分はテントの中で寝そべっている様子。Yの見たてでは流行りのソロキャンプとやらで、料理を楽しみゆっくり暮らすのだとかへー、あたしなんざにゃ分からない趣味だ。時代は爺さんを遠慮なく置き去ります。尤も、大倉高原迄登って来ただけでも立派って事か。

 撤収して下ると、登山者何パーティもと擦れ違う。この路を通って塔に向かう人がこんなに多かったんだ。何時もと違う時間違うルートだと、驚く事が多い。パターンを変えるのも面白いものである。ま、直ぐに分岐に着いて何時もの道になるんだけどね。

 後は何て事なく大倉、そして鶴巻温泉で途中下車して里湯でほっとする。湯に入ったら腰の痛みも消えたとY。歳を取ると分からん故障が出るものだ。

 今回は塔に絶対登る、と決めていただけに残念だ。きっとYが一番残念でしょうなあ。