2023年11月20日月曜日

閑話 その四百三十


  Yと塔に登るには麓近くで幕営し、暗いうちに出発しゆっくりと登って撤収して帰る。これしかないと、十七日に大倉高原幕営地でYと待ち合わせた。家を出る時は雨と風、傘を傾けて駅に向かった。妻は「Yさんと山に行く時は雨が多いわね」と言うが、確かに!

 ただ、登る時にはほぼ雨は上がっているのが常で、今回もそうだった。大倉高原へは四十分と思っていたが飛んでもはっぷん、一時間はたっぷり掛かって、あたしが着いた時にはほぼテントは張り終える処だった。勿論こんな日は誰もいず、我々の貸し切りであった。

 乾杯してからとっとと食事、十七時には寝てしまう。やけにせわしない騒ぎだ。翌朝は三時に起きるので仕方ないのだが、着いた、張った、飲んだ、食った、寝た、じゃ一寸と詰まらないが、塔へ登る為じゃ!

 一時十五分に小用で起きると雲の間の一面星、良し良しとほくそ笑んでその侭起きていて、二時にYを起こす。予定より早いが、早いに越した事はなかろう。三時二十分にはライトを頼りに出発だった。当たり前だが寒い。セーターの上にウインドブレーカーを着込んで丁度良い。

 体が未だ起きていないのか、バランスが偉く悪くてフラフラする。何ちゅうこったと思いつつも登る。Yが「腰が変に痛い」と言う。余り良くない話だ。

 何度か振り返るとその都度Yのランプが遅れている。足が何時もよりも遅い。すると明りが一つ,中々良いスピードで登って来る。ライト頼りの単独男性が抜いて行った。挨拶に返事もせずにひたすら登って行く。おやおや、変わり者はいるものですなあ。

 大階段のガラガラで「もう無理だ」とY。腰の痛みで腿迄動かないと言う。そこで登山中止、岩に座って小休止である。不調な時に無理しても碌な事はない。夜明けは近く、空は白んで来ていた。(続)

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