2017年5月16日火曜日

山の報告です その五十一




 直登が続くと傾斜が緩んで来た。空が広がって行く。ん、もう頂上に着くな。と思っているとピークに着いた。平らな頂きだ。
本当の頂上は一つ先のほんの僅か高くて、交流センターの屋根だけが雪から出て居る目の前の奴だろうが、手前の此処で充分だ。
 白砂山方面も上越国境方面も、霞んでいる。特に上越国境は遠いので霞がひどい。いずれにせよ、遥かに白い山々が連なっている訳だ。
 うーん、もう一寸とシャープな日だったらなあ、と愚痴を言ったら罰が当たらあね。晴れて景色が見えるだけで、どりゃあ上等だがね。
 行きは良い良い帰りは恐い、一仕事が待っているのでノンビリせずに下りに掛かる。急な直登は急下降となる。Yは後ろ向きとなって下って行く。二つ目の急下降はあたしも後ろ向きになる。前を向いては下れない。人には見られたくない図柄ですなあ。
 さてもうじきトラバースと言う地点で例の単独行が登って来た。昨日偵察に来てトラバースから直登迄試したが、ルートが正しいとの自信が持てなくて、鞍部に戻ってテントを張ったとの事。あのテントは矢張り彼だった。
単独行「貴方達の話を聞いて、雪山を楽しむのも良いかと思って」
私「悪魔の囁きでしたね」
単独行「今日はピストンして、ゆっくり本でも読みます」
 白砂山への縦走は諦めたと言う事だ。そう、六十歳を越えれば無理は禁物。今朝早く単独の若い男性が白砂山へ向かって行ったと言う。それで足跡が多かったのだ。
 彼と別れるとトラバースが始まった。「Yよ、何も見ずに何も考えるな。今足を置く所に集中しろ」
 行きと違って雪が大分柔らかくなっている。変に斜面にくっつくと足元が崩れる。山側にピッケルを打って両手で握り、一歩一歩慎重に行く。続きます。

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