2012年5月17日木曜日

柄でも無い事 その三十五




 出石(いずし)と言えば、旅好きの人なら知って居るだろう。但馬の小京都と呼ばれる、風情有る街だ。今は豊岡市に属して居る。
 豊岡からバスで行くのだが、売りは情緒有る町並みと出石蕎麦。そして、知る人ぞ知る出石焼だ。其の出石焼を見んとて、わざわざ行きました。出張帰りに豊岡で降りて、泊ままって、物好きですなあ。
 昔は別にして、現代出石焼は白磁専門で有る。釉薬は一切使わず、白磁で勝負する。彫り物で飾った物では無く、地味な品物だと一見唯の白い焼き物で、此れなあにと思うだろうけど、其の白さが俗では無い。
 分かんないだろうなあ。
 飾り気の無い徳利と杯(さかずき)を買い求めて帰った。家人には案の定分からない。
「何此れ、仏壇用みたい」
 失礼な。いや、良い物なのだから仏壇用にして結構な訳で、其の発言で宜しいのだろう。
 違うのだ。良い物だと分かって無い発言なので、矢張り宜しく無い。訳の分からん事を書くのは止めよう。普通の白い器と並べて見せる。
「良いか、同じ白でも此の肌合い、白、全然別物なんだ、よっく見て」
「そうかしら」
 駄目だ。唯の白い器としか思えないのだ。飾り気の無い、と書いたが、杯には微妙な飾りが有る。底に小さな花びらの模様が3枚描かれ、異例にも釉薬が其の3枚に塗って有る。そして、一枚だけ、微かなピンクで彩って有り、酒を満たすと浮き上がって来るのだ。
 うーん、憎い造りだ。此の杯の良さを見抜いた人が一人だけ居る。知り合いのSt氏(女性だが酒豪)で、一目で気に入ってくれた。
 葉っぱの秘密も一発で分かった。白の肌の違いも、当然分かって居た。嬉しいよー、あたしが造ったんじゃ無いんだけど、良い物を分かって貰えるのは、嬉しいものです。

2 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

なるほど、白にもいろいろな白があるのですね。 おまけに、杯をお酒でいっぱいにすると、淡い桜色の花びらが浮き上がってくる、、、すごく、すてきです。

kenzaburou さんのコメント...

本当に素敵なんです!
St氏以外誰にも分かって貰えないのが残念です。