2009年2月13日金曜日

閑話 その十二

イラスト4

 履物ついでに地下足袋です。
 加藤文太郎は何時でも(積雪期は違うだろうが)地下足袋を履いて山を歩いたと聞く。大きなキスリングを背に地下足袋の男が風の様に歩いている、見たら加藤文太郎だったと、何かで読んだ。その真似では無く(真似出来っこないし)地下足袋は愛用している。
 きっかけは小雨の勘七沢で有る。

店 004

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 F2に取り掛かった時は他のパーティの訓練中だったが、「どうぞ」と譲られ、一同見守る中を登った。履いていた登山靴が滑り、危なさと恥ずかしさで冷や汗を流した。
 で、沢には地下足袋と草鞋と決心、装備を変えたら岩に馴染む。コケでぬるった岩も大丈夫、やったー、こりゃ良いや! それからは、積雪期と縦走以外は地下足袋になった。ん、矢張り加藤文太郎の影響も否定出来ないかもしれない。と言うのは、地下足袋は沢以外では無力で有る。林道では石が食い込み酷く痛い。ザレ場、ガレ場、土場では蹴込みが効かず難渋する。岩の上では足裏に感覚が伝わる利点は有るけど、小さなスタンスに爪先を掛けて体重を預けるには無理が有る。
 へっへっへ、自覚しちまった、ファッションですなあ。あ~恥ずかしい(汗)。
 でも、履き慣れると軽いし、かさばらないし、メンテが楽だし、安いし、言う事無しの優れ物と思えて、愛用しているのです。
 軍足を下に履くのだが、弛ませて親指のスペースを造る。一昔前、其のスペースが充分では無く、右親指が圧迫され、帰宅したら爪が見事な紫色になっていた。詰まり、爪は死んだ。やがて紫の爪は落ち、新しい爪はへの字に盛り上がっている変な物だった。今でもそれに近い状態が続いている。別に生活上の不自由は無いんだけど、爪を切るのが難しいの。それだけが一寸と困る。すっかり懲りて、其れからは親指つきの軍足にしました。
 二昔前の晩秋、妻と北八ツの天狗岳へ行った。妻は軽登山靴、あたしゃ穴のあいた地下足袋。嬉しい事に薄っすらと雪、景色は美しいが、穴のあたりが耐え難く冷たくて痛い。予備の厚手の靴下を履いたら、ぴたっと痛みは消えた。至極当たり前なんだけど。
 何で厚手の靴下を履けたかと言うと、履物は何でも大きめという方針なのだ。靴なんざブカブカ、中で足が遊んでいる。従って地下足袋もブカブカ、其れが身を助けた訳で有る。
 地下足袋で困るのは、足裏の痛さは別にして、藪の中で指の又に笹やら草やらが引っ掛かり、文字通り足を引っ張る事。唯でさえ鬱陶しい思いをしているのに、追い討ちを掛けられるのは意外と嫌なものだ。
 と、欠点の多い地下足袋だが、天気の良い日の稜線漫歩には最適、軽々と歩けますよ。(多分)

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