2009年1月23日金曜日

閑話 その九

イラスト16

 

 私の背負子は四十年前にニッピンで買った。重いアルミのフレームに綿布の負い紐が付いて、本体部分は荒縄を捲き付けて有ると言う凄まじい物だが、当時はニュータイプだった。
 あちこちで便利に使った。ダンボールを二個楽々括れるが、多くの場合はダンボール一個の上にリュックを乗せた。無造作に多くの物を運べるのが偉い利点で有る。
 欠点は、常に重心は後ろなので、後ろに引っ張り続けられるのと、綿布の負い紐が硬く遠慮会釈無く、無闇と肩に食い込んで来る事だ。尤も此ればかりは有りとあらゆる背負子の共通欠点で、ニッピンの所為では決して無い。
 兎に角、一時間も歩くと両腕共感覚を失い、紐から腕を抜くにも苦労する有様、大変です。でも四十代半ば迄は使っていました。其の後は大荷物が無くなって、仕舞って有るだけ。
 ボッカの皆さんは今でも背負子に大荷物を括って登っている。偉いなあ!!!
 ニッピンの関係者はおいでですかー?
 良し、居ないみたいだ。では語っちゃおう。昔の話ですよ、今のニッピンとは別世界だから誤解の無い様に!当時(四十五年以上前)は進駐軍(米軍)払い下げの用具が山で主流だった。国産品
は東京ではニッピンで買うのが通り相場。色々情報が入る。
曰く「ニッピンのピッケルで制動を掛けたら、シャフトが折れたって!」
 え、下手すると(下手しなくても)死ぬぞ。
曰く「アイゼンの爪が溶接部分で折れたって」
 げ、此れもやばい、下手すると死ぬぞ。大体からしてアイゼンって、打ち出しだろう。
 でも何でも安かったもんねー。安ければ良いのが私のポリシー、否、イデオロギー(おいおい、余りに恥ずかしい事夥しく無い?)。良いんです。安全より経済が優先するのだ、私の場合は!責任は、勿論我に有りですよ。
 キスリング、ナーゲル、ピッケル、ヤッケ、アイゼン、シェラフ、天幕、そして背負子、ヘッドライトから燃料とあらゆる小物迄買い揃え、何の問題も無く、何十年も使い続けたもんねー(本当に)。人の噂も(全面的には)当てにはならない。一つ有った事が大袈裟に伝わるもんなんだ、と若くして知ったのは極めて幸い、ニッピンさんのお陰です。
 若しニッピンの関係者が読んでいたら(読んでっこ無いって!)、そう言う意図なので怒らないで下さいね。
 今買い物するのはさかいや、飯田橋に有る。前は凄く良かった。品揃いが半端じゃ無かった。今は残念ながら、ミーハー路線に切り替えた感が有る(え、お前向けじゃ無いかだって、でも一寸と高くなったし……)。
 山道具のコンビニ石井スポーツ(失礼!)と是非差別化をお願いしたい。これも石井さんに失礼な文章、お詫びしますが、本心です。
 山道具は大切で尚且つ楽しい。見ていると夢が広がる。あの山で使おう、此の山でと。
 ま、結局自分で、使い易い物を探すのです。

2 件のコメント:

ショートホープ さんのコメント...

 “安全と経済”といふ考え方は頗る健全でありますね。ええ、ええ。
 安全といい、経済といひ、とうの昔に無くしてしまった私めが、かく思ふのでありますからして。而して、ええと…。だからして間違い無い。と!!!
 ええええ。全く寂しくお寒い、花の金曜日ではありました、ですわいな。
 落涙。

kenzaburou さんのコメント...

うーん、安全と経済をなくしたねえ。
人事じゃないだけに情無い……。

ショートさんには花の(或いは地獄の)日曜日が待ってるじゃないですか。