2009年1月14日水曜日

蛭ヶ岳のビールのぬるい訳 その五

FH000007


 ある朝、皆さん並んで朝食をお盆で受け取って来る。早速横目で覗き込むと、封も切らない農協ご飯と味噌汁、キューちゃんの漬物と振りかけだった。受け取った人の情けない顔。大喜びで同行のYに教える。
私「Y、農協ご飯と味噌汁、漬物と振りかけだけだ、可哀そうに」
Y「しーっ、聞こえるよ」
私「見たか、あの情ない顔、はっはっはっは」
Y「……ひどい」
 書いていて呆れる。私は丸でたちの悪いヤジ馬そのものだ。其の上僻み野郎。人間の屑寸前とは此の事、深く反省しますです。
 そのYの話。Yは私の事を、やれヤジ馬だ、余計なお世話だというが、私は本質的に人に迷惑をかけたり(それほどは)しない。だがYは違う。
 別の時、季節は秋。北関東訛りの四十代末と思われる男性二人が、夕食を食べながら打ち合わせていた。勿論、旧蛭ヶ岳山荘の話。
「明日は四時には発って、朝飯は桧洞丸でどうだ」
「良いね。良し、ライト点けて、早発ちだ」
 この遣り取りは、尻上がりの北関東訛りですよ!
 この夜、この二人は私とYと、相部屋になった、Yは「いびきをかきます、済みません」とか言って、二人は、知らないものだから、「どうぞ、どうぞ」と呑気なもの。知らないとは恐ろしい。
 猛獣の叫びのようないびきが響いた。私は慣れっこ、何でもない。勿論、北関東の二人は慣れてないのでしょうね。翌朝五時、私達が朝食を食べていると、出発していなければならない二人が、ノロノロと、朝食の支度を向こうでしている。きっと、いびきで寝られず、出発できなかったのだ……。犯人Yは背を向けているので、全く気がつかない。知らぬが仏とはこの事で有る。
 北関東の二人は、チラチラと私を恨めしそうに見る。あ、違う俺じゃなく、こいつだ、とも言えず、その視線が怖かった。Yの人でなし!
 ついでにもう一つY談を。と言ってもYの話という意味です、期待した貴方、残念でしたね。へっへっへっへ……。(悪趣味?)
 焼山から姫次を越えて、蛭の登りにかかろうという時だ。積雪は30Cm、焼山から途切れずに二人の足跡が続いていて、そのトレースに乗って来たのだ。その先行者二人が雪上に立って休んでいた。遅れているYを振り返って見た。胸の前に何かブラブラさせて歩いて来る。一体何だ?
 近づいて来たら驚いた。洟水(はなみず)が二本、何と胸迄垂れて、歩くにつれて左右に揺れているのだ。そんなの見た事有りますか?普通だったらたらたら流れるものでしょう、洟水って。それが長い固形物と化して揺れているなんて、それも二本……。 (蛭ヶ岳のビールのぬるい訳 その六に続く)

0 件のコメント: