2009年1月18日日曜日

閑話 その七

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 本文に三度も挑戦した変な沢という章が有るが、三度も挑戦して失敗した冬山の話で、丹沢と離れるが、山繫がりでご容赦。
 南アルプス南部の上河内岳、茶臼岳と聖岳の間で茶臼の方に近い山で有る。普通は、何処其の、かみ何とかだけって?と聞かれる山。
 一昔前、静岡駅からバスで三時間、終点は夏と違い畑薙ダムの手前、ダム迄歩いて丁度一時間の国民宿舎前なので、偉く余分な苦労をさせられる。冬山装備はうんと重いのだ。
 初日はウソッコ沢小屋(此処も横窪小屋も茶臼小屋も、冬は無人小屋)を独り占め。翌日茶臼小屋にひーひー言って辿り着くと、快晴のどっぴんかん、茶臼岳をピストンしたが、思えば、この日が上河内岳に登り得る唯一の日で有ったのだ。
 茶臼の小屋は、荒川岳から縦走して来たパーティや、聖岳からのパーティがいて大混雑、私は上の棚に静岡は清水から来た五十代と三十代の男性二人連れと一緒に入った。五十代氏は疲れていて、さっさと寝ようとする。
三十代氏「え、もう寝ちまうのかい、面白い話の一つもしてくれよ」
 流石、清水ならではの言い回し!でも五十代氏は寝てしまった。面白い話の一つも無く。
 翌朝、降ってはいないがガスと強風、私は一発で諦め、食事をして下山支度をしていると、果敢にアタックに出掛けた其の二人が雪塗れで帰って来た。
曰く「全然駄目、吹き飛ばされそうだった」
 そうでしょうとも。で、さっさと下山し、バスを待つ間、国民宿舎で食事をし、帰京。

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 翌年、又静岡駅に着くと、降雪の為バスは運休。な、何て事!と慌ててJRで金屋へ行き大井川鉄道に飛び乗る。井川にタクシーは無いと聞いていたので千頭で下車、タクシーで畑薙ダムの三十分程手前迄入る。其処からは凍結が酷く限界だった。初日は例によってウソッコ沢小屋。単独行の男性が居て、尾根を真直ぐ突き上げ茶臼を目指すとの事。
 翌朝は降雪。ま、アタックは明日だから良いや、と登りに掛かる。雪はどんどん降る。私はゼイゼイと喘いで登る。三十代ならとっとと登るだったのになあ。
 横窪小屋に十人程のパーティが休んでいた。
曰く「積雪が酷く、引き返して来たんです」
 やばい!半端で無くマズイ。でも折角タクシーを飛ばして来たのだ、やれるだけやって見よう、今のパーティは大事を取り過ぎたのかも知れないし……。お馬鹿ですねえ、そんな事有りっこ無いでしょう!去年はスパッと状況判断できたのに、万余のタクシー代に目が眩んだんだ、情無い貧乏貧相な私。若い大パーティには無理でも、単独のおじさんなら出来ると思った訳?
 どんどん行きました、彼等が引き返した地点迄は。其処からは膝上のラッセル、しかも雪は降り積もる。傾斜が増すと腿上の深さになってしまい、汗だくに頑張って諦めました。長くなりました、続きは閑話その八で。

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