2009年1月5日月曜日

蛭ヶ岳のビールのぬるい訳 その二

FH000072

 去年の秋(平成十九年)、突然長男が表尾根に行きたいと言い出した。山好きでも無いのに何の間違いだ、悪い物でも拾って喰ったのだろう。おまけに予定日は雨。装備はGパンとスニーカー、木綿の格好良いシャツ。
私「明日は雨だぞ」
倅「だから静かで良いんだよ」
私「雨具は俺のを持ってけ」
倅「地図とリュックを貸して欲しいんだけど」
私「良いよ」
 服装についてはわざと触れなかった。言っても分からないが行けば分かる。嫌でも分かる。少なくとも死にゃあしないさ。案の定、雨の表尾根を歩いてしっかり思い知って、長男は帰って来た。
倅「Gパンは駄目だ、冷たくて固くて、酷い苦労だったよ」
私「そうだろう。ポリエステルにするだね」
倅「コットンは山に向かないんだね」
 そう、良くぞ気づいた。でも昔はポリエステルは無かった。ゴアも無かった。せいぜいウールが救いの神だった。だから、凄く山の怖さを強調した。今は逆の怖さが有ります。優秀な装備、整った環境、快適な山小屋(食事つき、頼めば弁当迄OK)。で、安易に登り(登れるし)、中高年がばたばた死ぬ。平成十七年には二百名以上(!)の遭難死者が出た。もう遭 難の記事は見たくないのです。原点に戻るべきだと思う。どの時代でも山は公園ではなく、大自然なのだ。再認識しよう。そうでなければ、遭難碑の四人が浮かばれない。
 繰言は大概にして棚沢ノ頭に登ろう。水場が有って嬉しい。蛭ヶ岳には水は無いから、補充して下さい。丹沢には珍しく、凄く近い水場ですからね。あれ、私は誰を対象に書いているんだ?案内書でもないのに。丹沢好きな人が対象だから、ま、これでも良いか、と思って下されば有り難いです。
 不動ノ峰から鬼ヶ岩に至る行程は、至宝のコースなのだ。嘘だと思う人は是非一度歩いてみましょう。これは本当に止めない。東丹沢此処に有りの感を抱く事間違い無し!
 鬼が岩の上で記念写真をとる人は転げ落ちないように気を付けましょう。落ちたら、とてつも無く酷い事になるので。
 鬼が岩から蛭ヶ岳への登りは、見た目と違い思いのほか楽だ。一寸と前はブナの中を登ったのだが、最近は階段を登る。悲しいが、自然保護なので仕方ない。ブツブツ言って諦めよう。
 蛭の小屋は新築なって、神奈川県営になった。県営小屋は置いておいて、私が語りたいのは旧蛭ヶ岳山荘、そう、Rさんの小屋だ。
 Rさんを嫌う人もいるかに聞く。でも、旧蛭ヶ岳山荘に何度も泊まった人は知っているだろう。最高の山小屋で、最高の山小屋の主人だったと。 (蛭ヶ岳のビールのぬるい訳 その三へ続く)

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