2009年10月31日土曜日

休題 その二十六

店 044

 

 長男が入院した時、彼の関係会社の人が見舞いに来てくれ、「プラネテス」幸村誠著を差し入れてくれて、長男が「此れ、宇宙物としては良いよ。でもたいして面白くないけど」と薦める。
 宇宙を舞台の劇画。読んで見た。ふーん、一応調べてるな、真面目に宇宙を描いて居るじゃないか、と感心する。放射線の危険も押さえて居る、偉い。しかも結構面白い。
 最初の頃は一話完結、やがてストーリーが展開するのだが、一話完結の頃が花だった。ストーリーが動き出すと、宇宙に対する拘りが希薄になって、危険性、広大さ、孤独さ、人間のちっぽけさ、は置いておいて、になっちまって、おいおい、とあたしは不服なのだ。
 宇宙とはドラマの背景とは成り得ない。あたしの仮説です。まあ、単なる思い付きなんだけど。
 宇宙で暮らすだけで最早ドラマで、ロシアの宇宙飛行士が確か一年半の世界記録を造ったのだが、地球に帰還したら即担架で集中治療室、見事助かった。
 彼はインタビューに答えて言った。
「どうだったですって?毎日、生きて居るだけで必死だったですよ」
 そうだろう。人が存在不能な環境で生きるとは、ミスは其の侭死に繋がるので絶対駄目。ノーミスを強いられる一年半、おまけにアクシデントが常に発生、あたしゃ嫌だし、出来っこない!
 立花隆の「宇宙からの帰還」に依ると、船外活動(宇宙服で宇宙に居たと言う事)をしたクルーは殆どが直ぐそばに“神”を感じ、引退してから宣教師に就く例が多い、と有る。
 分かる。あたしゃあキリスト者では無いので、ゴッドを感じるのでは無く、何かを感じるのだろう。
 其のギリギリの厳しさと、神秘さが、残念ながら「プラネテス」には描かれて居ない。テクニロジーが遥かに進歩した事が前提なのでスルーなのだろうが、そこんとこ確り押さえてくれなくっちゃさあ、と贅沢を言うのだ。
 下手なシナリオを習って居た頃、あたしは人の作品に文句は付けない(付けられない)のだが、SFとなると話が違う。
「どんな重力発生装置が有るのですか?」
「深海で泳ぎ回る為の耐圧服は相当の物でしょう。どうして身軽に動けるのです?」
「宇宙空間では音は伝わらないの。其の轟音って何なんです?」
 等々。若い人(おじさんはあたしだけだった)相手に大人気無い事を言い散らして居たが、どうしても見過ごせないのだ。
 「プラネテス」にはそんな心配は無用で、其れだけでも嬉しい。単行本四冊で完結してしまったのが惜しい。ストーリーも途中の感じで、何故?と思ってしまう。
 どうでも良いって?はい、宇宙好きの独り言でした。

2 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

おもしろそうなコミックですね。
文句をつけずにいられない、若い人相手に大人気ないが黙っていられない、、、そうです!!! 文句はつけなければいけませんし、黙っていてはいけないのです。科学知識もない、きちんと調べもせず 知識不足のまま、コミックや書き物をしている連中には天誅を! お金を払って買ったコミックや本の内容が知識不足で現実離れしていたり、誤っていたら、いじわるな質問で困らせたり 払い戻しさせるまでは許せません。私も宇宙や物理学のことはわからないのですが、医学的なことでは結構知識不足 調査不足で誤ったことを書いているの作家が目に付きます。若いもんにイチャモンつけずにいられない!!!

kenzaburou さんのコメント...

流石です、そう来なくっちゃさあ!

客が芸人を育て、読者が作家を育てるのです。