2009年10月1日木曜日

新婚旅行とキリギリス その四

FH000036

 

 上等だ、それでは温泉泊まりにしようと、下山にかかった。途中で日は暮れライト便りだ。若い者揃いなので足は速い、難なく西丹沢の駐車場の、私の(勤務先の)車に着いた。処がキーが無い。そこらじゅう探り、終いにはシェラフ迄広げて探したが無い。キーは失くしたと決まった。困った、どうしよう?何処まで私はドジなんだ……。
 何故だかBが針金を探せと言う。皆一斉に散って探す。その間にBは汚いタオルを川に浸し、車の窓ガラスに貼り付けた。タオルは見る見る凍りついた。Bはそのタオルに手をかけ、窓を引き下ろす。何と、少し隙間が開いた。うーん、凄い!
 Bはガレ沢を下るのは下手だが、変な知恵がある。北海道生まれは流石だ。都会人でスマート(対B比)な私なぞ、こんな時は全く無力である。
 Bはその隙間から、一人が見つけて来た針金(山の中にも有るものですなあ)を突っ込み、ロックを外した。そしてその針金でエンジンを起動させたのだ。Bよ、偉いぞ!立派な自動車泥棒になれる。尤も今時の車では無理だから、クラシックカー専門ですな。
 息をつくエンジンを騙し騙し走らせ、中川温泉へ到着。又もや一同は一斉に散る。今夜の宿の交渉である。やるもので、一人が交渉成立、安く泊めて貰えた。宿の台所を借りて、持参の即席ラーメンを作って食べたが、飛んでも無く空腹だったので、どりゃー美味しくて、未だに最高に美味しいラーメンだったのだ。河鹿荘だったと記憶があるのですが、その節はお世話になりました。
 中川温泉の何が良いって、何も無いのが、最高に良いのだ。何かが有るというのは、その他は無いという事だから、何も無いというのは、何でも有るという訳です。だって、有るものが無いんだから。
 ?????
 説明が下手で済みません。
 どうせ河鹿荘の名前を出しちゃったんだからかまわないだろう、信玄館(ツルツルの石棚山を下って泊まったのです)にはその後も何度か妻と行ったが、一押しの宿だと二人の意見は一致している。前述の通り何も無く唯々緑、内風呂一面のガラスが緑に染まり、お湯迄緑を写すのだ。秋なら黄葉、そして山と川のみ。テレビは有るのだが隠して置いてある。売りは静けさと手の掛かった創作料理。決して宣伝じゃないですよ、一銭も貰ってませんからね。
 言う迄もなく他の宿も同じ環境なので、兎に角静寂。どの宿に泊まろうと、川のせせらぎと鳥の声を楽しんで下さい。川原に鹿が遊びに来ます。
 勿論今はバスが行くから、神縄から延々と歩かずに済むし、でも、三円五十銭では泊まれないとは思います。山の帰りにゆっくりと湯につかり、静かな夜を過ごすには持って来いで、絶対お薦めの温泉ですよ。

2 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

うらやましいですねー。山の温泉。内風呂のガラスを通して 山の緑がお湯の色も変えてしまうなんて、本当に贅沢なお湯ですね。テレビも雑音もない そんな温泉で1週間 ゆっくりしたら人生の味わい方が変わってくるかもしれません。
質問:その後も 鍵のない車を動かすたびに 針金を拾って それで起動させて運転したのでしょうか?それとも、車のキーは 忘れてたけどポケットに ちゃんとあったのでしょうか。

kenzaburou さんのコメント...

内風呂のガラスが大きいのです。息を呑む程目の前の山の色が飛び込んで来るのです。当然、湯も山の色に染まります(涎)。

お答えします。鍵はドジなあたしが失くした侭です。起動の針金は確り者のBがちゃんとポケットに持って居たので、翌朝はそれで起動させました。

東京に帰れば予備の鍵が有りますので、万事OKでした。