2009年10月25日日曜日

山の報告です その八

DH000072

 その七の続き。
 良くしたもので、翌未明テントから顔を出し、満天の星空(冬の星座ですぞ)を見た時は下るなんてえ下らない考えは消えて居た。
 慌ててモーニングコーヒー、此れが無くっちゃあ山の一日が始まらない。大英帝国海軍の水兵はナイフで切れる様な濃いココアで一日が始まるそうだが、似た様なものだ。
 パッキンを済ませ小屋への登り返しは一汗掻く。何せ一番下なんだから。
 空身で唐松ピストン。残念乍ら日は上がって居たが、朝の清涼感に変わりは無い。今日の天気は先ず大丈夫、のんびりと景色を楽しむのだが、此れを本当の贅沢と言うのだ。
 さて、ザックを背負ってアップダウンが始まるのだが、岩稜が続くので緊張、と覚悟して居たが整備され鎖もばっちり。昔々半、反対ルートを積雪期に来た時は結構ヒヤヒヤしたが今回はOK。良かった!
 五竜の幕営地には十時前に着いちまって、小屋で聞く。小屋のフロントは若い女性。
私「五竜でノンビリすんだけど、幕営の受付してくれます?」
フロント「これからテント場も混むでしょうから、張っておいて結構ですよ」
 話が分かる、そう来なくっちゃさあ。さっさとテントを張って空身で五竜へ向かう。
 元がバテ親父なのでワリワリ登りは辛い。岩場に掛かればそんな事は言っちゃ居られないので、一生懸命登って頂上。
 此の文章をアップする迄に写真のデーター化が間に合うか心配したが、間に合いました。処が、如何にもらしい写真はデーター化していない、余りにも有名な構図ばかりなので。眼前は、秀麗な飽く迄秀麗な鹿島槍、其の横に遠く尖がってんのが槍ヶ岳、右は剣から立山、振り返ると、大黒をお供にした唐松、後ろに白馬槍。
 いやー、一日に二度の贅沢、罰が当たるんじゃ無いかな。尤も登りで十分罰に当たっては居るし、下りだって此の按配では苦労するだろうから、良しとしよう。
 キレットへ向かう皆さんはノンビリして無い。先が嫌な路続きなのだ。見下ろしてもガラガラな嫌な下り。三々五々出発して行く。
 唐松から前後して来た白人の二人連れが居た。五竜下の岩稜で、其の一人が方向に迷ってるので、あたしは大きく指で左を指した。「オサキニ」何と女性だった。逞しいから男だと思って居た。で、あたしが先に進み彼女は後を付いて来る。勿論無事に登頂です。
 其のカップルはキレットへ向かう。前後して来た手拭いを被った中年男性も、挨拶を交わしてキレットへ向かう。本文にもやがて書かれるが、山とは一期一会で有る。書いて居て一寸と胸が詰まった。山から帰ったばかりの感性でしょう。直ぐ消えて仕舞う……。
 あたしはゆっくりゆっくりと、テントへ戻るのです。
 何と、人様(と言っても来る人は稀なんで、良いのさ)の迷惑を顧みず、又もや続く。

2 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

真近に観る鹿島槍の大きいこと!!!
すごくいい写真ですね。とってもいい写真ですね。冷たくて乾いた山の空気が吹いてくるようです。

kenzaburou さんのコメント...

お褒めに預かり(すっごーく嬉しいけど)冷や汗です。休んだ時、シャッターを切るだけなので(三脚も立てず)、写真マニアに言わせれば、馬鹿!ってなとこなんで……。