2009年10月3日土曜日

閑話 その三十三

 嫌でも応でも、前回の続きで済みません(ペコリ)

“スカブラ”
 強風に描き出された文様は様々で有る。表面は小さく煌めく無数の反射板で構成されて居る。其の上を雪片が飛ぶ。
 スカブラの背景は、重々と連なる南ア連峰、そして逆光に聳え立つ富士、厳しくそそり立つ富士。
“風”
 ヤッケ、オーバーズボン、ロングスパッツ、出目帽、手袋。風は突き刺す様な寒気を浸み込ませて来る。特に手には一番きつく当たる。オーバーミトンを着ければ良いのだが、何かと不自由な為、手をきつく握って耐える。
 頂上よりの展望の連れも風で有る。ガスに巻かれた国師。赤岳と権現の一部を見せた八ッ、あそこも強風が吹きつけて居るのだろう。
 早々に山頂を辞し一筋刻まれたトレースを下る。白銀の尾根が真直ぐ続く。
“好天”
 登り始めは頂上付近はガスで有った。頂上に立った時は、八ッの一部を除いてガスは綺麗に払われて居た。恐ろしい程の青空の下の白銀の峰々。自分の立つ金峰も、染まりそうな空の青さと、真白く、目の痛くなる程真白く光る雪。
 ああ晴天、ああ晴天!
 君は知るだろうか。朝目覚めに星を見た時の緊張を、薄っすら明るみ始めたスカイラインを見た焦りを。急がなくては晴天が逃げて仕舞う。そうだ、急がなくては晴天が逃げて仕舞う!
“擦れ違い”
 頂上を踏んでの下山途次に、登頂に向かう人と出会うのは、仄かな喜びを感じさせられる。彼等は今登頂の苦しみの真っ盛りで有る。あとどの位でしょう?そうですね、一時間位でしょう。風はどうです?強いです、でも、最高の天気ですよ!
 擦れ違い乍ら微かに誇らしく思う。俺は既に好天のアタックを終了したのだ。
“山の唱”
 登山時には閉まって居た富士見小屋は開いて居る。周りには六張の天幕が張られて居る。昨日は人の気配も無かったのだ。
小屋の中から歌声が聞こえる。久しく聞かなかった山の歌だ。「山よさよならご機嫌良ろしゅう、又来る時にも笑っておくれ~」
 樹間の空は益々青く、今は全景を表した八ヶ岳がくっきりと空を区切って居る。
 私も歌い乍ら下って行く。山よさよならご機嫌良ろしゅう、又来る時にも笑っておくれ。

 18:30帰宅。

いやー我乍ら青いなあ。冷や汗を掻いちまった(恥)。万が一我慢して読んでくれた方が居れば、お付き合い頂き深く感謝します。

2 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

ワーワーワー! 1月の金峰山ですか。あこがれです。南アルプス 八ヶ岳を間近に観ながら 雪山を登るなんて 最高に贅沢な ながめですね。金峰って、田部重治の山ですよね。高度をかせぐと、古いトレースが強風でかき消されて、消えていくなかを、自分のトレースだけを残しながら前進、、、膝までのラッセル、、、すごい! 目に見えるようです。行って見たいですー。夢みたいです。
質問:霧にまかれても、方向は、間違えないものなんですか?ラッセルはピッケルだけで するものですか?

kenzaburou さんのコメント...

そうです、田部重治氏が好きだった筈です。彼は奥秩父の熱狂的フアンでしたから。

霧の中でも此の場合は道は分かりました。ツェルトを張ったのが中腹だったので雪も少ないのです。

膝までだったら、其の侭力任せに歩いてしまいます。

お見せしたいパノラマでした。