2009年10月12日月曜日

好事家は行く その二

FH000046

 

私「Y、これに掴まれ!」
Y「……う、う」
 Yも飛びついた。二人と一本はザレ煙を巻き上げつつ落ち、カーブでスピードが緩んだ。横は草の生える土の斜面だ。私はそこへしがみついた。
私「Y、こっちだ!」
 Yも木を捨て、草地にしがみついた。
私「どうして避けないんだよ」
Y「足場も手掛かりもどんどん崩れて、張り付いてるだけでやっとだったんだよ」
私「どうしようかと思ったぞ」
Y 「もう嫌だ、こんなの!」
 あれ、何処かで聞いた台詞だ。そう、前章の凍った桧洞丸での妻の台詞だ。
 書きながら薄々感じてはいたが、今明白に分かった。いやー、物を書くというのは自分を知る事でもあるのですなあ。これを書いて良かった!
 私は今の今迄、自分はしっかりしていて、人のドジのせいで迷惑を蒙っている、と思い込んでいた。処が、良く考えてみると私がドジって、お陰で人が迷惑を蒙るパターンばかりではないか。この騒ぎだって、私が本流を外さなければ、元々無い話だ。反省します。まとめて誤ります。迷惑をかけた方々、御免なさい。(深々)
 ま、気付いただけでも立派ではあります。え、違うって?まあね。
 Yとガラガラな場所で苦労した事が、外にもある。もっともこの件はYにも多少は責任が有る(?)と思う……。木の又大日沢を詰めた時だ。又もやマイナーっぽい沢なのだが、苦労するのは大抵そんな場所とは決まり物で、世の中もそんなもんでしょう、きっと……。
  詰めあげで壮大なガレ場に出た。見事に広がる大ガレ場、圧倒的である。直登なんぞは飛んでもごぜいやせん。こうなりゃ逃げるの一手、見回して左に逃げようとした。
私「左から行くぞ」
Y 「大塚さん、あそこ行けるよ」
 確かに広いガレ場の真ん中に、一筋ガレ尾根が有る。
私「……うーん」
Y 「あっちの方が楽で早いよ」
私「そうだな……」
 ま、決めたのは私だから、Yのせいとは言えない。でもYよ、確信に満ちて言い切ったのは君だぞ。(おいおい、リーダーは?)(はい、私です。でも余り自分が駄目だと悟ると辛くて、つい……)
(好事家は行く その三へ続く)

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