2010年3月30日火曜日

柄でも無い事 その十六

店 051  次に上演したのは駒場のアゴラ劇場。申し込んだら、一年はびっしり埋まってるよ、との事で諦めた。アゴラは、東大時代の野田秀樹御用達として名高い。従って小さく古い小屋なのに、人気が有る。今は平田オリザのホームベースになって居る。
 下北沢周辺の劇場を探して居たら、アゴラから電話が有り、急にキャンセルが出て一週間空いたが、と言うので即申し込んだ。
 昔演劇をやって居た、と切り出した癖に、タウンホールとアゴラでしか上演して居なくて、御一行様は様々な都合で解散しちまったんだ。えっへん。
 役者(?)が十二人、裏方があたしを入れて四人、大道具は組み立てから撤収迄外注。外に妻が雑用係り。
 休みを取るのがさぞや大変だろうと思いきや、流石に集まった諸君は好き者、問題無く休みを取って来た。
 前作が密室の三人劇、それも過激派を扱う世界の小ささの反動で、時代も地理も弾けて広げて見た。狂言回しにオカマのパンドラ迄使っちゃう滅茶苦茶さ。でも、受けました。
 此処迄ズルズル引っ張って来て、何が言いたいの?其れ、其処にやっと来たんだよ!話が遅いですなあ、客が帰るぞ。(ドキッ)
 時間の定義は色々有って、ニュートン的古典物理学では絶対的存在で、一定に流れる物だが、相対性理論では、座標の取り方に依っては異なる流れ方をするんだったっけ?
 面倒な話では無いのは知ってます。時間の流れ方は違うと言いたかったの。正確に言えば、違うと感じるのだ。
 平日は夜上演だ。昼頃から手直しして、役者はメークを始め、裏はブラブラして居るのだが、時間が濃厚なのだ。濃厚なブラブラ。そうねえ、羊羹の様に濃い時間が、あっと言う間に流れ去る、と表現すると、近いだろう。
 土曜はマチネが有るが、待ち時間なんて無いと同じ。濃厚なブラブラ。あれは何だったんだろう。プロは何時もそうなのかい?違うだろう。アマチュアならではの至福感では? 初めて何回も公演する昂ぶりだったのだろう、と想像するのだが、多分そうだろう。
 ありゃあ駄目だ。あんな思いをしたら、芝居馬鹿になっちまっても、責めるに責められない。じゃあ倅がそうならどうだって?痛いとこ突きやがって、メフィストかお前は!
 倅にはこう言おう。自分が家族を食わせられて(勿論、喰うだけでは無い)、尚且つ余裕が有れば(作れれば)やっても構わない。どうです、妥当な答えでしょう。
 繰り返しになるけど、羊羹の様な濃濃な時間が凄い速さで流れる。経験出来たあたし達を、幸せ者と呼ぶのです。一寸と疑って居る相対性理論だけど、此の件は全く支持します!

4 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

すごく思いいれのある作品だったのですね。羊羹のような濃厚な時間、、、って、本当に中身の濃い凝縮した時間を過ごされたのでしょう。
ご家族みなさん 芝居をされて息子さんにもおじいさんの才能が遺伝していったのですね。家族を食わしていく、、、って。おんなは 男に食わしてもらう為に生きているのではありませんゾ。男が本当にしたいことで、全エネルギーをかけられるようなものが 見つかったならそれを真っ直ぐ突き進めば良いのに。つまんないサラリーマンで食わしてくれてもねー!あんまり嬉しくないかもー。

kenzaburou さんのコメント...

……、詰まらないサラリーマンで食わしていたので、耳に痛いのです。

全エネルギーを掛けても生活が出来ない事は明白なので、趣味道楽としてやりました。

最高の趣味道楽でした。

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

そうですね。最高の趣味道楽、、、!
しあわせものの実感ですね。

家庭を持ち家族を食わしていくことが大切かどうか、、、を考えると いつも、お習字の先生と結婚された植村直己さん(わたしの英雄)のことを思い出します。で、いまでも氷のなかで眠っている姿を思い浮かべます。

kenzaburou さんのコメント...

家では夫(植村直己)は寒がりでした、と奥さんの談話に有りましたね。

寒がりの夫を、氷の山で亡くす悲しみは計り知れません。でも、そのエピソードで、さぞや良い夫婦だったのだろうなあと感じられました。

此の年になると、家族の大切さの比率がどんどん大きくなって行くのが、あたしは面白いのです。