2010年3月21日日曜日

あー、思い出したくない! その二

FH000139

 

 丹後山も近づいた時振り返ると、学生パーティは大分後方でテントを張って居る。彼等は行動中止だ。時間的にも妥当な処。青年は小休止中。
 一ピッチの頑張りで丹後山避難小屋へ着いた。青年も僅かな差で到着した。さて、小屋に二十人近くの登山者が居る。人気の山だ。私と青年は二階に上がった。
 此処からが辛い、思い出したく無い。
 荷物を収めると私は雪を取りに行った。コヘルに雪を詰め、ビニル袋にも雪を入れ二階へ持ち帰った。端にトタンのとよの様な物が有るので、其処へビニル袋を置いた。其の雪を青年にも分けて喜ばれた。
 テントを張れば良かったのだ。持ってんだからさ。そうすりゃ、誰にも迷惑が掛からなかったんだ。
 寝て居たら起こされた。
声「済みません、水が零れてませんか」
 私はライトを点け、周りを照らしたが水なんて零れて無い。
私「無いですよ」
声「そうですか、水が漏って来るんですよ」
 で、好い加減な私は寝てしまった。暫くして青年の声で目覚めた。
青年「あ、水だ」
 ライトで見ると床がビショビショになって居て、青年のシェラフも濡れて居る。え、何だ、どうしたってんだ!
 そうです、私の置いたビニル袋の雪が、融け流れてよ~え♪ おら、余りに辛いだで、歌っちまっただよ……。
 慌てて袋を持って梯子を降りると、下の諸君がツェルトを雨避け(?)にして、ポタポタ落ちる水を防いで居る。あ、御免なさい!
声「ちゃんと調べてくれれば良いのにさ」
私「……済みません」
声「こっちは酷い目に会ってんだからね」
私「……御免なさい」
 わーん、情無いよー、俺の馬鹿!
 其れ迄は青年と私は同士だった。ロングコースをやり遂げた奴と、お互いに思って居ただろう。でも、こうなると私は間抜け野郎、青年には微塵もそんな気は無いのは分かって居るが、私を哀れんでくれてる様に勝手に感じちまって、彼のシェラフも濡らしちまったし、下の諸君は、もっと酷い有様だったし、路も無い上越国境をやった喜びは、完全に消え失せてしまった。
 小屋から出発する時も、米搗きバッタ状態で、逃げる様に出たもんだ。あーーー、辛い!!!思い出したくも無い!
 忘れましょう。忘れられないから書いたんだけどね。はー……。
 次に行こう(行きたくねえー!)。
ふっふっふ、大丈夫なんだよねー、此の後は幸いにも、其処迄辛くは無いのだ。一番辛い話を終えて、楽になっちまって、いつもの好い加減男で行こうっと♪

2 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

やっぱり山男達の間柄って、紳士同盟みたいで、礼儀と仁義と「美」が大切なんですねー。かっこよすぎるような気がしますが、、。女同士だったら 失敗なんか、おたがいさまー、、、で、済むことなのに。

白山3山縦走のかえり、露天温泉が沸いていて、それまで誰にも全然会わなかったので 誰にも見つからないだろう と思って、ジャボーン、、、そしたら、降りて来るわ来るわ、、、。「すみませーん、上がりますから こっち みないでくださーい!!!。」これこそ、わたしには 思い出したくない大恥の経験です。アホな単独行のわたしを横向いて見ないふりして通り過ぎてくれた方々、すみませんすみませんすみません。

では、ここで刑事調で、、、
「あれも これも、おまえがやったんだろう。吐いちまえよ。さっさと全部吐いちまって 楽になんなさい。」
らくになりました。

kenzaburou さんのコメント...

はっはっはっは、それは困ったでしょうね。タイミングが悪い時はそんなもんですなあ。
「すみませーん、上がりますから こっち みないでくださーい!!!。」
さぞや必死な大声だったでしょう、はっはっはっは。