2010年3月22日月曜日

休題 その三十五

 

bases01_074[1]  三十四の続きです。
 父のアルツは容赦無く進む。家庭内での泥棒騒ぎは良い。良くないのは他人を巻き込む事だ。
父「○くんは元気かなあ」
私「もう亡くなったって、言ったでしょう」
父「え、知らないよ、何で知らせてくれないんだい!葬儀にも行ってないじゃないか」
私「何年も前なの」
父「そんな馬鹿な!信じません、電話して聞いて見る!」
私「昨日も電話したんだよ、迷惑でしょう、毎日毎日!」
父「そんな馬鹿な、電話なんてしてません!」
 仕方無く、電話のコードを抜く。
父「電話が変だ」
私「話し中なんだよ」
 何て倅だ。電話位したって良いじゃないか。○さんのご家族には申し訳ないが、適当に話を合わせてくれるものを。第一、○さんはお元気だよ、と答えておけば良かったんだ。
 ……思いやりの無い倅だった。
 此れもパターンだ。ご存知だろうけど、念の為に。
父「ご飯は未だかい」
妻「お父さん、今食べたでしょう」
父「食べてません!」
私「今食べ終わったんだよ、ほら、食器が洗い場に有るでしょう」
父「私は食べてないの!」
妻「じゃあ、お父さん、一寸とだけね」
 父は又食事をする。
父「お代わりを下さい」
妻「大丈夫なの、お腹を壊さない?」
母「好い加減にしてよ、下痢すんでしょう!」
父「下痢なんかしないよ!」
母「後始末する身になってご覧!」
妻「お母さん、良いから、ね。お父さん、軽くですよ」
父「はいはい、軽くで良いですよ」
 勿論下痢をする。逆に便秘になる事も有る。本の通りに食事券を作ったが、意味無かった。お変わり券も作ったが、意味無かった。本人が認めないのだから。
父「知らないよ、こんなの。誰が作ったの?」
妻「夕べ、食事の時に出すって決めたのよ、お父さん、覚えてないの?」
父「知りません!そんな好い加減な事で、ひ、人を騙そうったって、そうは行かないんだ!」
母「誰が騙してるって!え、好い加減に……」
私「(被せて)お母さん、黙って!」
 本に書いて有る事は悉く試して、悉く効果は無かった。人と状況に依って変化するものなのだろう。当たり前と言えば当たり前だ。教科書通りに行けば苦労は無いと言う事。長くなりましたので、続きます。済みません(ペコリ)。

6 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

お父様は、認知症がでても、奥さんと 息子さんと お嫁さんと お孫さんたちとで みんなで お世話されて、とても幸せな方でしたね。わがままいっぱい!!!山歩きが好きな方でしたか?

kenzaburou さんのコメント...

山とか酒とか煙草とか、全く縁の無い父でした。
新派の俳優だったので、舞台に立てなくなっても一応現役なので、本人の焦りは大きかったのでしょう。
幸せである事は、間違いないと、思っています。

ショートホープ さんのコメント...

 本編も楽しいのですが、山を見て怖がり、登りは苦痛、下りは失神…てなダメ人間の権化みたいな私。根性なしのコンコンチキです。
 ええ。そうなんです。専ら下界で酒・タバコの自堕落大好き放蕩中年は閑話休題の続編に熱視線なんです。
 なんといっても筆者のファンだし。ね?

kenzaburou さんのコメント...

ショーホープさん
>根性なしのコンコンチキです
嘘をつくと駄目ですよ。
>下界で酒・タバコの自堕落大好き放蕩中年
うーん、此れは正しいかなあ。

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

俳優さんでしたか。それでは お顔も整って、声も大きくよく通る声で、姿勢もよくて、素敵な方だったのでしょう。

kenzaburou さんのコメント...

舞台俳優ですので、声は大きく良く通るのは、当然です。でも、段々マイクを使うようになって、堕落してしまったのでしょう。
親父は古い舞台人なので、池波正太郎が父を何かの文章で褒めてました。
確かに、最期の舞台人の一人なので、姿勢は良かったです。