2010年3月26日金曜日

あー、思い出したくない! その三

FH000017

 

 春の奥穂に登りました。横尾にベースを張って、ザイテンを登って、奥穂のピークに立った。高曇りで、雲の下に雪の穂高と槍が鎮座まします。此れは此れで見事な景色だ。お見せしたい景色だった。写真でもお目に掛かった覚えは無い。
 さて、下りの梯子に来て、前の人がお先にと言う。雪が付いて居ると結構嫌な梯子(ご存知でしょう?)なので、断りたかったが、恐る恐る下りに掛かったら、アイゼンの爪先が石を引っ掛け、落としちまった。
 「あ!」とか「大丈夫か?」との声が聞こえる。しまった、誰かに当てちまった!
私「済みません!大丈夫ですか?」
声「大丈夫」
別の声「気を付けろよ!」
又別の声「危ない場所だからね、落とすなよ」
私「御免なさい……」
 大事に至らず良かった。頭を直撃し梯子から転落なんて事になったら、警察沙汰だし、申し訳無さ過ぎる。
 落石なんて初歩的ミスを、しかも嫌な梯子で起こすなんて、恥じ入るばかりで、奥穂頂上の雄大な景色もすっかり色褪せてしまって、スゴスゴと俯き加減に下山して行った、と言うお粗末でした。
 思い出したく無い話は続く。イヤダイヤダ。
 四昔前、俗に言うとこの大昔、土星の環が消える言う天文現象が有った。最近も有った筈だ。勿論本当に消滅するのでは無く、輪の厚みは100mにも満たない(!)ので、角度に依っては観測不可能になる現象だ。
 Iともう一人の同期生も誘って、三人でご苦労にも見えない環を見る(?)為に、テントと望遠鏡(口径8cm)を担いで花立の頂きへ登った。
 せっせと夜道を登ってテントを張ったのは良いが、モロ曇天で、見えない環なんざ見えない。望遠鏡は大きくは無いが赤道義付で、鉄の塊が付いている訳だから、重い。こうなりゃあ唯の邪魔な荷物だ。
 腕組みして雲を見上げて居るうちに明るくなり、撤収と決まった。折角花立へ来たのだから、帰りは三ツ峰にしよう、観測もパーだったんだし。
 背負子に望遠鏡を括り、三ツ峰を下った。曇っては居ても三ツ峰は清清しい、若者達はどんどん下り、宮ヶ瀬のバス停にあっけなく着いた。大昔の事だ、午前中なのに登山者が結構居る。
 その人混みの中、私は無造作にIへ振り返った。バスの時刻でも告げるつもりだったのだろう。体ごと振り返ったのだから、背負子の望遠鏡は振り回される事になる。気付けよ、馬鹿だなあ、人に当たったらどうすんだよ。
 当たって仕舞ったのだ、其れも赤道義の鉄の塊が、頭に……(汗)。
 其の人は蹲って呻いた。わー、どうしよう!
 (あー、思い出したくない! その四へ続く)

4 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

あ、背が低いので よくやられてます。急に振り返った女性のショルダーバッグで、バックーンと、アッパーカットされ、髪の長い女性の振り返りざまに、髪がバサッと顔にかかったり、、、。
穂高のなかでもいちばん立派な奥穂高岳から見た 穂高連峰と槍ヶ岳の穂先、、、どんなに素晴らしいか と思います。春先では、雪も深くて大変だったでしょう。 男の子が生まれたら穂高という名にしようと思っていましたが、二人とも男の子じゃなくて、名前をつけそびれました。

kenzaburou さんのコメント...

え、大きい女性だと勝手に思っていました。此れに関しては誰も文句はつけないと思います。
穂高子も有りでは?無いなあ、やっぱり。

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

あはは、穂高子は ないない。梓川の梓にしようかと思ったんですが、梓という名の信州出身の看護婦に当時 すごくいじめられていて、泣かされて帰ることも多々、、、どうしても やな奴の名はつけられませんでした。先輩は自分の息子に「登」と「渉」にしてましたね。

kenzaburou さんのコメント...

え、Doglover Akiko さんを苛める人とは、凄い豪傑ですなあ。当時(何十年前かは知りませんが)は、Doglover さんも新人で初々しかったという事ですね。

あ、今が初々しくないって事じゃないんですよ。