2009年12月27日日曜日

閑話 その三十九

FH010019

 

 一期一会の無言の会話は、船窪小屋から始めたが其処は二泊目だったので、補足します。
 初日は朝の梓で信濃大町へ、扇沢でバスを棄て、針ノ木雪渓を登って針ノ木小屋泊まり。真夏の太陽を浴びて居ても、雪渓を歩き出すとヒヤーッとするのは、何処も同じで、雪渓上のみ薄いガスが流れるのも、楽しい風物なのです。天然の冷蔵庫ですなあ。
 小屋は混んで居たが、自炊の客は私と男(勝手に付けた呼称)のみ、自炊場で知り合った訳だ。其処から野口五郎小屋迄、前後し乍ら行ったのだ。
 ビールを飲んで居ると真っ暗(一寸とオーバー)になって、雷鳴が轟く。ソラ来た!と飛び出すと(軒の下です)水煙の上がる土砂降り、其れをビール片手に満足気に眺めるあたしは、一寸と変なのかも知れない。そうだって?否定はしません、何たって山の夕立は豪勢な見ものなのだから。第一、自分は濡れないし(実に身勝手です)。
 本文の通り、夏の午後は必ずと言って良い程此れが有る。行動中の諸君はあっと言う間にびしょ濡れ、気の毒です、はははは……。
 あたしゃあ、相変わらず酷い奴ですなあ。でも、貴方もきっと同じ思いを抱くと思います。違う?違わないって、同じ場所で同じ状況に有れば、そう思うでしょう(……多分)。
 翌朝も快晴。清清(すがすが)しい空気の中、先ず蓮華岳へ登る。此処は高山植物の女王と呼ばれるコマ草が多い。写真は其のコマ草なのだが、何せ腕が悪いので、女王の貫禄が感じられない。勿論、あたしの所為なので、乞ご容赦。
 ぼやけたバックの、一際高く目立つのが舟窪岳で、其処迄は心地よい稜線漫歩が楽しめる。でも、此の稜線へ踏み込む人はそう多くは無い。皆さん針ノ木峠へ戻って行く。従って其れ迄の小屋と比べれば、舟窪小屋は本当に小さな小屋なのだ。人が来ないんだもん。
 で、舟窪小屋に泊まった人も、殆どは其処から下って仕舞う。野口五郎へ向かう人は、とても珍しい存在だ。
 舟窪から右手に急角度で高度を落として居るのが、其の忘れられた(と言うより相手にされない)稜線なので、見ただけで、何かなあと思わされて仕舞う。写真の範囲外には、低い樹林に細かいアップダウンが続いて居て、其れが烏帽子に向かって再び高度をぐーんと上げて居るのだ。ね、嫌でしょう?
 併し其処が目的でやって来た、あたしと男は仕方が無い。泣き言は言わずに頑張るしか無いのだ。ま、好んでやって来た馬鹿も居る、ってパターンの見本です。
 小さな舟窪小屋はご家族で運営して居る、と見た。如何にもあたし好みの小屋です。主人夫婦と娘さんで有る。其の奥さんが、水が有るよ冷たいよ、とあたしに声を掛けた処から、話が始まったのだ。
 其れからは、本文通りなのでした。

2 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

良い写真ですねー。
歩きやすそうな尾根がゆるやかに続居ていて、日本の山の良さが よくわかります。
コマクサはピンク色のもヴァイオレットのも繊細で優雅で綺麗ですね。
でも馬の顔に似ている形なので コマクサと呼ばれるようになった と聞いて えええ!? 馬?っと ちょっと びっくりしました。あまりに馬のイメージと離れているので。

kenzaburou さんのコメント...

歩きやすそうな尾根は船窪迄なのが悲しいのです。
其の先はただただ辛いのでした。

コマクサが馬?知らなかったです。でも名前を考えると、多分そうだろうと思います。