2009年12月23日水曜日

休題 その二十九

店 046

 

 

 乱暴話のIT君が嬉しそうに言う。
IT「いやー、世の中には未だ良い人も居るもんだよ」
 突然何だ、夕べの酒が残ってるのか。
IT「電車に上等な背広の男が乗って来て、網棚にペットボトルと雑誌を置くのよ」
私「ほう」
IT「奴は座って新聞を読み出してさ、此れが嫌味ったらしく、バサッバサッと大きな音で新聞を折るのよ」
私「自己を顕示する行いね」
IT「そう。ムカムカしてたら奴が降りるんだ、網棚のゴミはその侭でさ」
私「最低じゃない」
IT「怒鳴ろうと思った瞬間、六十代の男性が声を掛けたんだ、貴方、忘れ物ですよ、ってさ」
私「へー」
IT「奴は其の男性を睨み付けたけど、ゴミは持って降りたよ。俺は嬉しくなって、其の男性と話し込んじゃった」
私「ほう」
 私は、へー、とか、ほー、としか言ってない。丸で阿保だが、乱暴事はIT君専門につき、仕方の無い事で有る。
 別の時のゴミの話。
IT「派手な学生のねーちゃんが座ったとたん、ジュースを飲んで菓子を食い出したんだ」
 シンガポールなら犯罪で有る。
IT「バリバリ喰い続けんだよ」
 派手に装って居るだけに、見っとも無い事夥しかったのだろう。
IT「駅に着いたら、座席をゴミだらけの侭降りるんだ」
 家はゴミ屋敷に決まって居る。IT「おい、忘れ物だよ!と言ったら、渋々持って行ったよ」
私「はっはっはっは」
 古来日本人を律して居たのは世間様で、人の目が怖い、此れが道徳のベースだった様だ。其の悪い部分が、旅の恥は掻き捨て。
 今は世間様は無い。人の目も無い。律するものが無い。崩壊しつつ有る社会のサンプルとしては、得難いものだ。ま、此れも経済が破綻して、本当の貧乏国になれば、自然と直るとあたしゃあ思ってるが、保証の限りでは無い。
 乱暴話のYNが言う。
YN「シルバーシートに寝そべってる若い奴が居たから、脚を掴んで引きずり落としてやったんだ」
 YNのやりそうな事だ。
YN「何すんだ!ってえから、あ?と見たら黙りやがった」
 見た、のでは無く、凄まじく睨んだ、が正解だっただろうと思う。いずれにせよ、何か当然の注意をするのも、簡単には出来ない。ITやYNの様に腕に覚えが必要だ。何でも話し合って解決と言う幻想が、此の現実を作った訳です。

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