2009年4月25日土曜日

休題 その九

店 017

 

 あたしゃあ酒好きでツマミなんざ不要、唯々何時迄も飲み続けて呂律が回らなくなりヨロメクだけの弱い横好きおやじなので、其れ程は人にも家人にも害は無い筈だ。
 唯、年に一度位無闇と荒れて家人に迷惑を掛ける時が有る。今回は其の話。(又もや酔っ払いの話、失礼)
 何に荒れるかと言うと此れは毎回決まっている。此の飯は何だ!会社は馬鹿ばかりだ!あいつは気に食わん!うちのガキは何でアホばかりなんだ!どうして俺は貧乏なんだ!女房の面が気に食わん!残念でした、全部外れに決まっていて、そんな愚にも付かない事で荒れたらあたしの沽券に関わる。四十年以上も丹沢を這い擦り廻っていたのは伊達じゃあ御座いやせん。
 荒れた時の台詞は決まっている。
「アメリカの馬鹿野郎!てめえふざけるな!」
 其れを大声で怒鳴る。あたしゃあ地声が大きいのでさぞや迷惑この上なしと推測する。
「東京大空襲は何だ、組織的に計算づくで廻りを火で囲んで逃げ場を絶ち、民間人を十万人も焼き殺した奴が、良くも恥も知らずに東京裁判とやらをやりやがったな!!」
 そうです。前の戦を思い出して怒るのだ。(思い出すって変だ、生まれる前だから)
「原爆を落としやがって、しかもその為に敗戦となったのだから、本土決戦で何千万の日本人が死ぬより良かっただと?ふざけろ!!」
 此れが始まると家人は逃げ散る。誰もいないリビングで仁王立ちのあたしゃあ怒鳴り続ける。(馬鹿は死ななきゃ直らない、ですな)
「原爆を落とさなくたって日本が降服する事は判りきっていたのに、野郎二発も落としやがって、実験に決まってる!!」
 ご存知だろうけど一応説明すると、広島はウラン型、長崎はプルトニウム型で、異なるタイプを一つづつと言う事。
「若しもだ、原爆で屈服させるなら事前通告して海上に落とせば充分効果が有ったんだ!」
 しらふの時でも全くそう思う(一寸とは飲んでるけど)。
「人道に対する罪だと!其れは手前のこった!!大体商船を無警告でかたっぱしから沈めやがって、国際法違反だろがよ!!」
 日本が真珠湾を宣戦布告無しで(暗号の翻訳が間に合わなかった、送別会で飲んでいたので。当時の外務省の罪は万死に値する)攻撃したので、米国は報復に即商船を無警告撃沈の方針を決定した。
「戦犯だと!かたっぱから死刑にしやがって、民間人を殺しまくっていた卑怯なパイロットを殺したら戦犯???どっちが戦犯だよ!!」
 よっく考えれば、東京裁判とか言う裁判でも無いリンチ(法律を元に構成するのが裁判、元となる法律も無く自分の好きに裁くのがリンチ)を有難がって、未だに相手の思うなりになっている人間にも腹を立てているので、特に反米論者と言う訳では無いのです。
 米軍の残虐さと共に、相変わらずマッカーサーの走狗となってそれに気付く事も無く得と述べる文化人、マスコミ人を、一人で怒鳴りつけている部分も有るので、虚しくも情無い男で有ります(哀れ……)。

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