2011年1月23日日曜日

ああ、空よ その三


 (写真は北穂でなくて失礼。空が少しは黒く見える例で載せました)
 話は戻るが、その北穂に登っている時、休
憩時に座れる場所を掘ってピッケルを打ち込んで座ると、上を見ていろと教わった。
I「大塚、ブロックが落ちるからな、来たら
避けろ」
私「ブロック?」

I「雪の塊だ、当たるとまずい」

私「まずいのか?」

I「下手すると、死ぬぞ」

私「え、そうか」

 ピックを握って、煙草を吸いながら上を見
ていると、本当にブロックが、音も無く跳ねて落ちて来る。あ、と思う間も無く、下を登って来る登山者に見事に当たった。当たる時は当たるのだと驚いた。広く急な北穂高沢に、一つの跳ねるブロックを、人に当てようとしても不可能だ。しかし現に、当たった。宝くじ並みの確率だろう。その当たった彼は蹲った。宝くじじゃなかったのが、気の毒だ。
I「……な」

私「……ん」

I「ほら、上を見てろ」

私「ん」

 大事に至らず、良かった。人が落ちて来る
事も、たまに有るそうだ(?)。幸い、見た事は無い。
 経験者の意見は聞くべきだ。どうでも良い、
好きに生きるぜ!という奴は、人類数千年の知恵を全て否定するべきではないのだろうか。古い話は真っ平で、好きにしたいんだから。従って何も無し、ロビンソンみたく生きるなら、話は分かる。止めないよ。
 その休憩の時、空を見上げていたら、空が
黒かった。ヒマラヤの写真は嘘ではなかった。
 知ってる人は知ってますよね、あの空の色。

 雪の穂高の山々より、より強く印象に残り、
心を捉えたのは

黒いと見える程の青くどこまでも

どこまでも深い青空なのだ

 青年の私はそう思ったのです。今の私でもきっとそう思うでしょう。(尤も、もう雪の北穂沢は登れないだろうなあ)
 此の時、三日目だったと思うが、テントの
中から、表に出したホエブスに点火したら、何でだか分からないが炎上を始めた。私とIはわっと驚きテントの奥に逃げた。馬鹿である。表に飛び出せば良いのに、幾ら大きいテントといっても、10もある筈は無い。
I「気を付けろ、弾けるぞ!」

私「そうか!」

 我ながら間抜けな返事である。何時ガソリ
ンが爆発するかと、身を縮め、シェラフを盾に息を殺していた。馬鹿である。万一爆発すれば破片はシェラフなんざ簡単に打ち抜くだろう。
 ん?ホエブスは灯油が燃料だったかな、白
ガソリンを使うのは何て呼んだっけ、まあ、酔ってんでOKって事でご赦。(ホエブスは白ガソリン、ラジュースが灯油。素面の著者注)
 (ああ、空よ その四へ続く)

5 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

ラジウスは白灯油です。普通の灯油と違い臭いがしないのです。スベアのが未だに在ります。悪戯っ子は学生の頃、6畳に半畳の押入に靴脱ぎ場に水道のアパルトマンに住んでました。三畳で水道無しのセイガクもいるので、まぁそこそこですね。因みに、4500円/月でした。
石油ストーブ禁止なので電気ストーブで面白い目に合いました。ある晩ホワイトアウトしたのです。なんと部屋中に白い羽根が舞ってました。
あれが普通の布団なら燃えて死んでたでしょうね。
ラジウスは石油ストーブではない!!!
ので使ってました。天井は真っ黒(固形燃料の故です。
天井にはハンモックがあり何でも放りあげ勉強机無し本棚無し・・・麻雀用の卓のみありでした。90人中、3番目に強く、育英会の、お金が入る頃に集金業務をしてました・・・・・多分授業の回数よりもハンチャンの回数の方が多いと確信します。

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

空が 黒いほど深い青って、素敵です。
本当に山は良いですねー!

悪戯っ子さんは、じつにユニークで貴重な学生時代を送られたのですね。6畳一間に羽根布団。麻雀にヨットにスキーにときどき授業。貧困と富裕とプロレタリアとブルジョワがチャンポン、、、!すごい。

kenzaburou さんのコメント...

悪戯っ子さん

麻雀も流行らなくなりました。昔は学校の回りは麻雀やだらけだったのに、流行り物は廃れ物(すたれもの)、世の習いですなあ。

kenzaburou さんのコメント...

Doglover Akiko さん

悪戯っ子さんは、本来由緒正しい生まれなのですが、放埓に生きて来て、今日を迎えたのです。あ、悪い意味じゃ無いですよ!

匿名 さんのコメント...

あ”
悪戯っ子が誉められた
百年に一度のことです

年百年中、馬鹿をしていると、こうなるという標本ですね