2010年4月29日木曜日

閑話 その四十七

DH000028

 

 

 例の通りネガが無いので、冬の大正池の写真で失礼。
 思い出したくも無いの章で、奥穂高で落石を起こした話をしたが、其の時の山行です。
 当時は沢渡から延々と歩き、釜トンネルを越えて大正池に着くのだが、其の日はラッキ―にも快晴、キスリングはズッシリと肩に食い込み、汗が流れる事流れる事、幕営地の横尾へ着けるか、不安を感じる有様。
 あたしの大分先と大分後ろに単独の男性が、矢張り暑さに痛めつけられながら歩いて居た。
 釜トンネルを越えて一寸と行くと、前を行く男性が、遠くで大きく手を振り何か叫んで居る。彼の横に軽トラックが止まって居る。
 乗せてくれるんだ!と咄嗟に判断、人間とは面白いもので火事場の馬鹿力、やっと歩いて居たあたしが走り出した。うーん、必死とは凄いものだなあ。
 ハアハアと車に着くと、荷台に乗って居た件の男性が引き上げてくれ、即車は走り出した。小屋の荷揚げ車だった。上高地迄乗せて貰えたのだが、可哀そうなのは後を歩いて居た男性で、我々が車で去った事も知らずに、汗を垂らして歩き続けた訳で有る。
 視界の範囲に居たからだが、あたしを呼んでくれた前を歩いた男性には、感謝の一言で有る。車に乗れなければ横尾には着けなかっただろう。本当に暑かったのだ。
 礼を言って車を降りたのは、河童橋近く。後は梓川や白い明神岳を楽しみ乍ら、横尾へ無事到着。テントを張って、一丁上がり。
 翌朝、薄暗いうちからサブザックを背に飛び出し、涸沢へ向かう。何せ若かったので、難なく雪上一面色取り取りのテントが咲き乱れる涸沢へ着いた。
 あたしが横尾の幕営に拘るのは、雪が無いからと、混まないからだ。涸沢は吹けば雪が舞い上がり丸で吹雪、おまけに偉い混雑なので、景色は夢の様だが、敬遠して仕舞う。
 ザイテンには見事にトレースが付いて居る。皆さん涸沢から出発するからで、もうとっくに奥穂直前で有る。横尾から来る奴は殆ど居ない。あたしの他は数人だった。
 従って人気(ひとけ)の無いザイテンを、ひたすら登る。そして、頂上を踏んでから、落石騒ぎになったのだ。
 下りはガックリし乍らも尻セードで下る。クソッ、あの落石さえ無ければ、最高の気分だっただろうに。ドジな野郎は所詮そんなもんさ、ふふんでい。
 横尾への下りで、車に乗り損ねた男性と擦れ違った。可哀そうにやっと涸沢に着くのだ。
 テントに戻ってビールをグーッとやったら、嫌な事はすっかり忘れて、高曇りの山々が思い出され、すっかり気分が良くなっちまったのは、能天気で有る。山を登って帰ったテントは素敵なの。たとえドジを踏んでもだ。
 雪の穂高は良いなあ。どの位良いかっと言うと、モグラで表現すりゃあ、3m位の大きさだ。分かり易い説明でしょう?
 死ぬ迄に、もう一度登って見たいなあ。

2 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

素晴らしい芸術写真ですねー。穂高の頂上が大正池に映って、素晴らしく立派です。冴え渡る空気のなかで、水の冷たさが伝わってくるようです。
そうですか。横尾山荘の近くに 幕営して、身軽になって登り、帰ってくるのですね。ずいぶん、長い距離を一日で帰ってくるのは大変だったでしょう。
死ぬまでに、「冬の」穂高岳縦走 やってみたいって、KENZABUROUさん できるじゃないですか。 このあいだ軽ーく 五竜岳やってきた人が、、。
わたしも、死ぬまでに「夏の」穂高、槍が岳縦走 やってみたい、やってみたい、やってみたい!!!

kenzaburou さんのコメント...

オーストラリアに穂高が有れば、充分可能でしょうが……。
大陸なのに、高山帯が無いのが変ですよねえ。