2009年6月22日月曜日

私が自炊に拘るのは その一

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 長い間山歩きをしていると、ひどい目に会う事も勿論多い。幾つか思い出す侭に書き出して見ようと思う。人がひどい目に会う話は、誰でも大好きでしょう?
 え、そんなの私だけだって?偽善だ、絶対に嘘だ! 人の不幸は蜜の味、人間が人間で有る限り、逃れられない罠なのだ。始めましょう、名づけて“ひどい目大会”です。(センスねー!)
 軽くジャブから。
 昔の天幕は重かった。綿布の厚手で作られており、ポールは木で、後にぶっといアルミに変わった。張り綱を無闇と引っ張り、それも丈夫な綿だった。雨で濡れたら重さは倍になる、丸で拷問用具のお友達と言うべき代物だ。
 それが化繊となり、ポールも湾曲する自立式になって、今のスタイルになったのだ。凄く張るのが楽になった。持つのも楽になった。その端境期(はざかいき)の事だ。友人のBから新式の天幕を借りて、雲取山へ出かけた。十一月末の或る日で有る。
B「 大塚、一度張って見ないと分からないからな、絶対練習しとけよ」
私「あいよ」
 何事にも好い加減な私は、ふん、天幕なんて馬鹿でも張れらー、と思っていたので好い加減な返事をして、その侭雲取りへ向かったのだった。ま、結果として馬鹿には張れなかった話だとは、読めたでしょう?
 天気はお陰様でもろガス。袖口は凍りつき、頂上の地面はガチガチ、しかも風がうんと強い。最高じゃん!手なんか動かなくなっちゃってるし、鼻水は流れ放題、リュックを解く指も思うに任さない。大好きなシチュエーションだ、何度経験したか!
 頂上には新型天幕がポツンと一つ張って有った。かじかむ手で天幕を引っ張り出し、ああ張るにはどうすれば良いのだ、と悪戦奮闘するが、さっぱり分からんのだ。だからBは地上でゆっくりと張る練習をしとけと言ったんだ(テンポのずれた納得です)。えーい、寒いし面倒、と天幕を頭から被って、炊事をして寝てしまった。
 翌朝もガス。とても寒い朝だ。何と恵まれた、天幕にくるまった芋虫になった私。吉永小百合の歌「 寒い朝 」なら構わないです。聞いても寒くない。だが、本当に寒い朝は、寒いんですよ。
 私はガバット天幕をめくった。鬱陶しかったからだ(分かる人は分かりますよね)。すると、新型天幕の中のおじさんが、びっくりしてこっちを見ているのと、目が合った。
私「(ニッコリ)生憎なお天気ですね」
おじさん「……」
 (私が自炊に拘るのは その二へ続く)

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