2009年6月21日日曜日

柄でも無い事 その二

店 027

 

 あたしゃあ今は現役で無く予備役みたいな契約社員なので、当然乍ら収入は微々たるもので、良く此れで生活出来るもんだと思うんだが、出来て居るから不思議で、此れは妻の努力の賜物なのだろう。
 で、何だと言うと焼き物の話です。
 現役時代に偶々覗いた個展が、美濃焼きの塚本治彦氏で(実名を出しても殆ど人の来ない孤島なので問題無いでしょう)、美濃大好きなあたしは一品購入してから個展の度に案内状を貰う。それも物凄い達筆で!
 今年も届いたが、どうしても見に行きたくなっちまった。何故かと言えば前述の玄関で割れた徳利の一つが備前の船徳利で、此れが未練にも残念で(前と話が違うって?御免なさい!)、何か代わりに良い物が欲しいと思った訳なの。どう見ても身の丈に合わない贅沢な望みですなあ。
 そこで妻と一悶着、当然です。
妻「もう山ほど焼き物は持ってるでしょう!ダンボールに迄詰まってじゃないの」
私「そうなんだけど……」
妻「大体録に使って無いでしょう、無駄ってそういう事なんです!」
私「そうなんだけど……、折角案内状を貰ってんだし、宛名は手書きだし」
妻「相手は商売よ、何考えてんの!」
私「だから、その、商品券が有るから……」
妻「無駄遣いの為に有る訳?」
私「違うけど……」
 結局、其の商品券はあたしが退職した時貰った物だったので。
妻「本来あなたの物なんだから、仕方無いね」
 て訳であたしゃあKデパートに行きました。流石に良い物が並んで居る。一周してから(全作品を見て)買う物を探す、と言うのは自分が買える(詰まり廉価な物、情んなかあ)良い物を探すのだが、不思議と一発で分かるので、此の日は鼠志野のぐい飲みだった。
係りの初老男性「良い物が残ってましたね」
 何と美しい台詞!尤も誰にでも言うのかも知れないが、取り合えずあたしは自分の目に狂いは無かったと安心する(間抜けかな?)。
 処がご承知の通りデパートで此の手の買い物をすると何故か偉く時間が掛かり、下手すると作家が現れ、此の時も現れました。若いのだ塚本君は。でも陶芸家と思うと変に緊張する小心者のあたし。
私「……伊賀も焼かれるのですね」
塚本氏「……はい」
 陶芸家は大抵無口で、あたしも無口だ。
私「黄瀬戸が良いですね……」
塚本氏「……はい」
 冷や汗がタラタラ垂れる(本当なの)がハンカチを持たないあたしゃあ手で拭く。
 其処へ名古屋のお茶の師匠が現れて、お茶を淹れるのだが、案内状にお茶の接待と有ったのを思い出すが手遅れ、冷や汗は脂汗に。
私「無作法です!」
 ま、自棄っぱちで一気に飲みました。つくづく情無い我が身、恥を曝しちまったぜ。

0 件のコメント: