平成十八年、十九年と続けて正月に八ツの行者小屋に泊まった。昔なら当然幕営なのだが、折角小屋が有るのだから、とすっかり堕落極まり無いおじさんに落ちぶれたのだ。う、う、多少悲しい(涙)。
目的は、阿弥陀から赤岳を撮りたいという柄にも無いものなので、二回共見事に失敗したのは言う迄も無い事。
小屋泊まりは天国で有る。暖かい!水は汲み放題!ビールも飲める!Drファーストでなくとも魂を売ってしまう、だから自分を責めるのは止めよう。え、自分に甘い?う~む、還暦過ぎだから許してちょんまげ。(余りに古くて失礼!)
小屋入り口の自炊場に居ると、テントの連中が水を貰いに来る。学生が二人来た。
学生A「わー、先輩、暖かいですねー」
学生B「そうだ」
水をどっさり汲んだ(パーティ分なのだ)二人は出て行く。
学生Aの声「寒いっすよー!」
あたしゃあ思わず吹き出す。
トイレへは廊下を少し下がって行く。良くしたもので、床のラインから下は凍りついて居るのが面白い。トイレには石油ストーブが燃えて居て、幸せだなあ。
肝心な阿弥陀の話。十八年は入山日快晴、アタック日ガス。それでも登りました、猛烈に吹かれながら。勿論展望なんざ薬にしたくも有りゃしない、とっとと下ってお仕舞い。
十九年も入山日快晴。唯、前日までの降雪の為一面白一色、トレースも深く刻まれて居る。翌朝は晴れ、やったねと飛び出したが、阿弥陀へのトレースは無い。踏み込むには雪が深過ぎて、トレースに乗って赤岳へ登って仕舞って、阿弥陀は失敗。
この時小屋に戻ると、登山者二人と小屋の若い衆が洗面器を横に何やらやって居る。アノラック(此の呼び方で良いのだろうか?)上下を脱ぎながら見ると登山者の一人の傷の手当をしている。良く見るとその男のアノラックは血で真っ赤になっている。岩登りで滑落したらしい。ザイルで確保されては居たが、岩に叩き付けられた様だ。
丁度頭の傷の手当が終った処だった。次は脚だ。
小屋の若い衆「下着を切りますよ」
男「買ったばかりなんだよ」
小屋の若い衆「手当てが出来ないでしょう」
男「じゃあ、やって。(連れに向かい)女房には内緒だぜ」
怪我よりも、新品の下着(冬山用は高いのです)を駄目にしたのを奥さんに知られる事が気になるとは、思わず近親感を抱いて仕舞ったのです。
ヘリを断り、自力で下るとの事、剛毅なものだと感心した次第、怪我も無いのにゼーゼー歩く我が身の情け無さを痛感させられた一幕で有りました。
0 件のコメント:
コメントを投稿