2013年1月29日火曜日

我がロマンチック街道 その七





 山はお天気商売、見渡せれば、何の問題が有るの?の世界なのだけれど、見渡せなけりゃあ、此処は何処?私は誰?今は何時?の世界に突然なっちまうのだが、経験の無い人には、其れが死んでも分からないだろうとは、はっきりと分かる。春山とは、夏山と冬山が隣通しに存在する世界なのだ。
 地蔵の頭で稜線は北へ向かう。後は一直線に北へ向かえば良い。檜倉山(1744,3m)、柄沢山(1900,3m)を越えると巻機山への登りとなり、登り切れば巻機山なのだ。後の章で出て来る天国の様な幕営地は檜倉山だと、新しい地図を見て分かった。詳細は、後のお楽しみです(え、楽しみじゃ無いって?こうなりゃ楽しみにするの!)
 巻機山には三つのピークが有り、自分の位置が分かり辛い。とは言え、道の無い山域だが、巻機山だけには単独に登山道が有り、春スキーの諸君が清水から大勢登って居る。だから下るには全く問題は無いのだ。
 春の清水部落の民宿には、ずらーっとスキーが並んで居て、そりゃあ見事なもんなのだ。皆さん、巻機山がお目当てなんですなあ。
 此の縦走の間、巻機山寸前迄誰も会わなかった。雪上の多数の足跡のみだ。従って、青い青い空と、白い白い雪の山は私の独り占め、こんな贅沢は滅多に出来ない。説明すれば、足跡のお蔭でルートに悩ませられる事は無いし、だったら此の山域に、私一人にしてよ!って願いが叶ったと言う訳です。
 巻機山への登りに掛かろうかと言う時に、一人の登山者が巻機山より降りて来た。清水部落を背にしてから、初めて出会う人だ。それが驚いた事に、其の年の冬山の地蔵岳で会った青年だった。彼は鳳凰三山、私は早川尾根縦走で出会ったのだ。
 彼が私に声を掛けて、正月に会いましたね、と。前述だが、私の背負って居るキスリングが目印だったのだ。当時でももう、キスリングは珍しくなって居たので分かったのだ。彼は付近を歩いて、巻機山へ戻って下山するとの事。滅多に無い邂逅でした。
 さて、残るはあと二区間となった。此処いらでロマンチック街道も、小休止としましょう。
 (我がロマンチック街道 その八へ続く)

0 件のコメント: