2012年8月30日木曜日

閑話 その八十六




 随分前に「一期一会無言の会話」と言う章が有った。実は、無言の会話ではなく、実際の会話だったのだ。其れを無言の会話とすると、多少膨らみが出るかな、と思って一寸と演出しました。外の章は一切演出抜きです。
 何で今更そんな事をゲロるの?何、「一期一会」を引き出したかったからなんで、廻りくどいですなあ。
 初心者向けの、源次郎沢に行ったのだ。八月初めの暑い日だ。滑や小滝を飛沫を浴びて越えて行くと(凄く気持良いんですよ!)、岩の上に点々と濡れた足跡が有る。
 誰か入って居るなと思って行くと、男性が休んで居た。メットにザイル、ハーネス着装、渓流シューズの完全装備で有る。
 沢で人に会うのは珍しい。彼は私の一つ上、茅ヶ崎から車で来たとの事。最近は毎年歩くのが遅くなる、と何処も同じ秋の夕暮れの話だ。こっちにも、身に覚えが山ほど有る。
 暫く話して別れ、私が先行し、暫くで滝が有った。見るからに水量多く、直答は無理っぽい。で、此処いらからだな、と無造作に斜面に取り付いたのは良いが、例に依ってのザレ土と脆い岩、木の根や篠竹を頼りの必死の登りになったのは、馬鹿丸出しで有った。
 源次郎はメジャーな沢で有る。必ず巻き道が有る筈だ。其れを探しもせずに、マイナーな沢と同じ流儀で取っ付いて、死に物狂い、挙句の果ては何処から川原に戻ろうかと、ウロウロオロオロとする。下りは怖いのだ。やって見れば即分かる。
 其処へ巻き道を登った男性が追い着いて来て、川原から声を掛けてくれた。姿を見たら川原迄の距離が掴める。ああ何と有難い、よし、此処からだ、とお陰で下れました。
 其の彼に、沢で人に会うのは稀なので、滝を登る姿を撮ってくれと頼まれ、引き受けた。脚の遅い男性を行っては待ち行っては待ちし乍ら、F7、F8は埋まって居て、とうとうF9迄来て仕舞った。空滝で唯の岩場だった。
 直登はしたくない空滝だ。写真は諦めてどうするかの談合となる。男性は巻き道が有ったと主張するが、ガレが被さり何も無い。私は前回はどうやって越えたのか考えたが、分からない(明らかな惚けだ)。直登したかも知れない。或いは枯れた大木が滝に掛かって居たかも知れない。多分そうだろう。続きます。

2 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

確かに、沢登り 沢下りの写真は貴重ですね。装備が重い上に、カメラを構えるのでは、撮られるより 撮る方が余程大変でしょう。それに他人のカメラでは、壊しても落としてもいけないでしょうから、、。

kenzaburou さんのコメント...

そうなんです。人のカメラは落とすのが怖いです。岩にぶつけるかも知れないし。