写真が無いので、既載のイラストで失礼。
紅葉の山、或いは黄葉の山の鮮やかさを、説明するだけ野暮で有ろう。
当たり前過ぎるのだが、そう書いたら思い出したので、一寸と書いて仕舞おう。何、例に依って、下らない思い出話です。
合戦尾根を秋深い一日に登って居たと思いなさい。三昔前の事だ。従って背中にはキスリングが乗っかって居る。
唐松林に差し掛かった。勿論見事に真っ黄色、空は真っ青、登って来て良かったと思うと同時に、早く稜線に立ちたいと焦る瞬間でも有る。
それから一寸と高度を稼いだら、新雪で白く輝く稜線が、唐松の黄色の後ろに姿を現して来た。やがて、唐松林の上に白銀の稜線と言う、絶好の配置になって雪と黄葉を同時に楽しめたが、あれは綺麗でした。
此の日は大天井ヒュッテ迄。稜線の雪は風に飛ばされるので、ほんの僅かで数Cmしかない。それでも遠目には白く輝くのですなあ。
大天井ヒュッテには数パーティが泊まって居た。二人連れの女性客に、単独の男性が話して居る。
男性「大丈夫だ、俺が連れて行ってやるから」
槍へ向かうらしい。あたしも其のつもりだったので、耳をそばだてる。女性には優しい男性登山者で有る。
男性「アイゼンは有るだろう?ルートは氷ってるからね」
女性達「持ってます」
しまった!!あたしゃあアイゼンを持って来なかった。
どうせ、雪だって薄っすらと有るだけだろう、と気楽にやって来たのだ。アホじゃ。一発で理解した。解けた雪は氷となるのだ。氷の皮膜に覆われた岩稜を歩くのは、アイゼン無しではお勧め出来ない。
で、翌日は燕へ戻って其の侭下山と決めた。良いのさ、表銀座は逃げないもんねえ。又来れば良いだけの事だ、へん。
ドジを踏んで引き返す事になっても悲しくも無かったのは、本当にそう思ったからなので、今ならばさぞやがっかりするだろう。又此処へ登って来なけりゃなんねえのけえ?辛えだよ……。
嫌だ嫌だ、歳は取りたく無いもんだ。我乍ら情無い。
翌日も快晴。早朝大天井の頂上へ上がったが、いやー、寒かった事。突き刺す様な風で有った。天気は間違い無くもつ。クソ、アイゼンさえ有れば、とは思ったが、悔いても及ばない。あたしは馬鹿だなあ、と改めて思う瞬間で有った。
白く輝く裏銀座を見乍ら燕へ向かう。又来るぞ、何時にしよう、いっそ春にするか、なぞと考えつつ。
合戦尾根を下るにつれ、冬から秋に戻って行く。そして中房温泉に下ると無料の露天風呂が待って居るのでした。
2010年12月11日土曜日
閑話 その六十二
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4 件のコメント:
そもそも悪戯っ子は合戦尾根がどこかも知らないので調べました。燕岳(つばくろだけ)への稜線なのですね。ふりがなが無ければ「ツバメ」としか読めないのですが山男が白馬を「しろうま」と呼ぶぐらいは知っています。
アルプスは遠慮して無料の温泉だけでも行ってみたいですね。
紅葉のころの表銀座、色付いた唐松、青い空、白い輝く稜線、、、すごく豪華な取り合わせですね。最高じゃないですか。単独行の男性と女性の二人連れ、、、「よし、俺も君たちを連れて行ってあげようじゃないか。」と言えなかったの、、、残念でしたね。本当に残念でしたね。まったく残念でしたね。重ね重ね残念でした、、、(シツコク言う)
悪戯っ子さん
其の通りです。はくばではなくしろうまです。
JRははくばと駅名を定めましたが、大間違いなのです。
Doglover Akiko さん
残念では有りました。
でも、あの景色を見れただけで充分だったと思えます。
写真は有るのですが、ネガが無いのでデーターに出来ないのが残念です。
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