2010年7月22日木曜日

柄でも無い事 その二十一

店 054

 

 沈寿官と言えば、皆さんご存知の薩摩焼きの神様だ。苗代川に窯を構えて、俗に言う白薩摩を焼いて居る。
 バスに乗って、遥々と行った事が有る。静かな町で、何軒もの窯元が並んで居る。人通りの絶えて無い町で有った。
 で、白薩摩、黒薩摩以外の薩摩焼きを紹介しよう。苗代川では無く、鹿児島市内に窯元が有る、長次郎焼きだ。此の写真はGE初登場です。
 写真の通り、黒では無く、茶色に近い色合いで、第三の薩摩焼きで有ろう。
 市電終点の谷山駅から歩いて十分位、住宅地の中に一件だけ窯が有る。覗くと、風情は何処も同じ秋の夕暮れならぬ、何処も同じ窯元の様子で、薄暗い中に諸々の品物が並んで居る。
 黒薩摩の売りは、あの荒っぽい迄の朴訥さなのだが、長太郎は繊細で有る。茶色の肌が何とも素敵なのだ。光の具合で微妙な色合いを表す。一編で気に入って仕舞った。
 そうなると目移りがする。うーん、此れは良いぞ。いや、こっちも良いぞ。
 おかみさんが出てきて説明してくれる。
「お酒を入れて使ってると、良い艶が出て来るですよ」
 そうでしょうとも。焼き物は使って居るとより味わいが深くなるんです。仕舞って置いても、何にも変わりません。酒器は酒と出会って、初めて生きるのですから。あたしも、酒と出会って初めて生きるみたいなもんだから、生きて居る酒器ってな位置づけですな。
 此処で言う酒器とは、徳利とぐい飲みの事で、狭義の酒器なのだ。手を広げると際限が無い世界なので、焼き物は狭義の酒器だと、自己規制をして居る。
 壷や甕や茶碗や食器に手を出すと、あれも此れもになっちまって、破産です。元々が破産寸前なのだから、身の丈に合った生き方を心掛けては居る訳だ。え、仕方無くだろうって?ビンゴ!
 尤も、窯元に出向いては好みの酒器を買うのは、最早身の丈を弁えぬ振る舞いでは有るのだが、何度も書く通りに出張ばかりして居たので、役得と言う事でご勘弁を。
 其れに窯元で買うと、東京で買うより安いのでは?運送費や中間マージンが掛かって無いのだから。訊いて確かめては無いが、多分当たって居るだろう(無責任?)
 長太郎に戻ると、一つの徳利がニッコリと笑いかけて来たので、即座に其の徳利を選んだのだ。
 ホラーやファンタジーじゃ無いので、本当に笑いかけて来たのでは無いのは、説明不要だろう。此れだ、と思う時はそんな気がするもんなんです。
 其れ以来、長太郎の徳利は遠い東京の我が家で暮らして居る。良い艶は、出掛かった位の処かな。
 マイナーな薩摩物の紹介でした。

5 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

不思議と客の集まるラーメン屋さんにゴキブリが多かったり、美味い蕎麦屋のオヤジの白かった筈の長靴が汚かったりします。
でも悪戯っ子としては、味さえよけりゃ良いんです。米搗きバッタは良質の蛋白源と考えます。
器は出来れば綺麗な方がいいけど、屋台で其れをゆったら屹度、熱いスープをブッカケられること必至なので大阪人(ばれてます)を装って「オオキニ、ウマカッタデェ」というと次の時にネギがやたらに多く盛ってあったりするのですね。これが嬉しいのです。ラーメン、蕎麦、クロッキーは瞬間芸ですね。
ところで、その器。醸し出しているのはセクシーさ、といっても良いですか?
蕎麦猪口でぐい飲みが似合いそうですが、3杯で終わりかな。江戸期の蕎麦猪口をコレクションしてる友がいるのですが、小生には見せるだけで使わせてくれません。困ったものです。
彼が呉れた潰れた店の業務用皿はや落としても割れないし、ステーキ様ナイフでも傷が付かない。ガラス器はガチャガチャしても欠けないし凄いもんですね。神(変換できません)さんの秘蔵の二合徳利を道具屋に持ってってみようかなぁ。

匿名 さんのコメント...

誤字がありました。ケン様同様よっぱらいですのでご容赦願います。

kenzaburou さんのコメント...

二合徳利は勿論箱書き付きでしょうね。道具屋はそれしか見ないでしょうから。

奥さんに張り飛ばされない事を祈ります。

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

なるほど深い茶色なのですね。美しいですね。完璧な形と色合いです。これでは、お酒がおいしいでしょう。
沈寿宮、白薩摩、黒薩摩、長次郎焼、、、なにも知りませんでした。勉強させていただきました。ありがとうございます。
ネットで いろいろと観てみましたが、写真でみただけでも 良いものは、良いですねー。

kenzaburou さんのコメント...

Doglover Akiko さん

そうですか、薩摩焼きをご存知無かったのですね。当然です、知らない人の方が遥かに多いのです。

薩摩焼きは、中々良いもんですよ!